実はひとつ気がかりなことがあったのだ。
結局私は迷っていた。
現状ではもう、ほとんどご飯を食べられなくなっている。
しかしだ、どうも意欲はあるような感じに見えるのである。
名前を呼ぶとまず顔を見てニャーと鳴き、次にすぐに手元を見る。そこにご飯があれば、すぐに匂いを嗅ぐ。
今はもう口をつけなくなってしまったが、突然ではない。その前には口はつけた。その前は、少しだけ食べた。
もしかして、何か口に問題が起こってたりすることはないのか。そうなると、病気の治療とはまた、別問題のような気がするのである。食べられさえずれば、体力がついて一時でも元気になる可能性がある。
まぁもうこの歳でこの状態だ。何らかの大病にかかっている可能性もあるが、それとは切り離して考えたいのである。
しかしそれをハッキリさせるには、病院に連れて行かなくてはならない。
病院は病気を治すところである。いい先生だ、病気の可能性があれば全力で病気を探し、治療にかかるだろう。
果たしてこれから検査、治療が続く生活をミュウが望むだろうか。少なくとも私は望んでいない。
でも、もし問題が単に口にあるだけなら、「食べる」という希望が出て来るのではないか。
延命は望まず摂食はさせたいというのは、矛盾かもしれない。自分でも、説明できない。
ただ、これをハッキリさせないというのは、間違っているような気がしてしまうのである。
ミョウが食べられる希望を潰しているような感覚だ。
結局私は、ミュウを病院に連れて行った。
病気の治療は望まず自然に任せたいという前提を伝えたら、先生は非常にあっさりとそれを受け入れてくれたのだ。
その上で全身を見て触れて計り、最後に口の中を良く見てくれた。
結局、口の中に異常は見つからなかったのだ。
体重の減り方から考えても、何かの病気である可能性が高いだろうとのこと。
しかしもう年齢を考えて、と、先生もそこから先へ進もうとはしなかった。
最後にできることとして、食欲増進剤を出してもらったのだ。前にもラッキーとミュウの窮地を救った薬である。
これが効かなかったら、もうできることはなさそうだ。
覚悟はできた。
無理矢理食べさせることも飲ませることもしない。
病院に行って良かった。もう何も、迷うことはない。
薬は効いてくれるだろうか。