永遠などないことは分かってはいたが。
とうとうミュウが食べなくなってしまった。
ボケてるだろ、と思うほどの猛烈な食欲だったのに、パタリと催促が止まり、こちらから出してもほとんど残してしまう。
顔を見れば「ご飯!!」と鳴いていたミュウは、今、静かにソファに座り込んでいる。
異変だ。異常である。本来なら、病院へ行くところであるだろう。
批判は承知だが、しかし私はもう病院へは行かないと決めていた。
病院行けば原因を明らかにし、然るべき対処をし、いくらか、いっときは、良くなるだろう。
病院は、手を尽くしてくれるのだ、生きるために。
しかしもう、ミョウは死に向かっている。
ストレスのたまる通院も、恐怖かりの検査も、心細い入院も、無理矢理飲まされる薬も、望んではいない。
21歳だ、十分生きた。人の勝手で苦痛を与えて少しばかり長生きさせることに、エゴを感じた。
ラッキーの看取りがあったからこそ辿り着いた答えだ。
あれはあれで、ベストだったと思っている。
私には、死を受け入れる時間が必要だった。病院が、治療がその猶予をくれたのである。
恐らくもうそう遠くない日に、ミュウは死ぬだろう。
辛いけど、覚悟はできている。前とは違う。
ミュウの尊厳を守り、あるがままの生と死を全うさせてやりたい。
と思うのもまた、人間のエゴなのだろうか。
私は飼い主としての責任を放棄することになる。「責任」とミュウの「尊厳」をはかりにかけた結果だ。
いいか悪いかは分からない。いいケースも悪いケースもあるだろう。
ミュウに苦痛があるならそれを取り除いてやりたいが、それもまた、通院の苦痛とはかりにかけることになるだろう。
私は神ではない。命に関わる選択をすることに、もちろん恐れはある。
しかし自然の摂理に逆らって動物を家族としたのだ、運命はこちらに委ねられている。
人間だからこそ、今の医学だからこそ、できることもある。
病院に行くなら、最後のチャンスになるだろう。
さっきからずっと、どうする、いいのか、と自問自答を繰り返している。
覚悟は決めたはずだけど、自信がない。
どうする、
いいのか・・・。
*続きがあります。