この季節の草木の成長ぶりには、凄まじいものがある。
庭放置を決め込んで数年が経つが、草むしりと植木の散髪だけは最低限やっている。
これが私の「放置」のギリギリラインだ。
何十個もの砂の入ったままの植木鉢はそのまま、枯れ草もそのまま、勝手に伸びていく不死草ものそのまま、これとて恥ずかしいが、片づける手間と天秤にかけて現状となっている。
さて、そろそろこの最低ラインを下回らないようにせにゃならんかの。
やたらと緑が多くなってきた庭に気付く。
肝心な芝の方はいつの頃からかもう緑になることはなく、枯れ草色のままだ。
つまり庭が緑になったということは、それだけ雑草が生えているということなのである。
雑草抜きは、嫌いではない。やりはじめると妙にハマり、止め時がないほどである。
あのメリッと抜ける時の快感、メリメリッなどと行った時には「ざまあ」などとちょっと得意げになってしまう。
逆に根っこが残って切れてしまった時の敗北感。
こういうのはタフなヤツほどまた生えて来たりして、タチが悪い。
よりによってこのような不良をしばらく放置してしまったために、どんどん成長してしまった「主」がひとつあった。
どんどん根っも強く太くなるので、どんどん抜けなくなってくるのだ。どんどん成長する。
コイツにもケリをつけることにした。
スコップで根の周りを掘っていく。
時々引っ張って揺らしてみるが、なかなか動こうとはしない。
根元には大量のダンゴ虫が、その上には大量のアリがコロニーを作っていた。
まるで先日観た映画「アバター」の、精霊の木に住み着いたナヴィ族みたいである。
掘っていくと今度は幼虫が出て来た。
起こしてしまってすまん。
別に穴を掘って、移してやる。悪いが住み心地などのことは良く分からん。
いよいよガリッとこの庭の底辺に当たったような感触があり、思いっきり引っ張ってみた。
やっと、抜けた。
メリメリッどころの快感ではない。
勝った負けたなどの単純なレベルではなく、「やり遂げた」という達成感。
大物を排除したら、あとは地味にメリメリと進んでいく。
奥地に入れば例の、放置植木鉢の宝庫だ。
見たくない。今回も逃げる。
目的は常にひとつだ。
今日は雑草抜き一点絞り。
そしてそこにはもうひとつ、逃げていたものがあった。
フォエバーローズである。
地植えにして元気を取り戻して油断した結果、生やしっぱなし。
季節が来れば綺麗な花をたくさんつけてはくれるのだが、なにせ放置の果てだ。決していい状態ではない。
意を決して向かい合うと、おお、大量のつぼみ、中には綺麗に咲いているものもある。
けなげだ。
見ると何らかの虫に浸食されているようで、葉は食い散らかされたのかスカスカ、大量の細かいフンらしきものが付着している。
そしてなぜか、ヌラヌラとテカっている。
ところどころ白い斑点があり、病気もあるのかもしれない。
それでも花だけは、気高く咲いていた。
すまん。
恐らく私が一番すまんと心の中で言っているのは、ダンナか植木類に対してだと思う。
少なくともダンナに対する「すまん」は改善する気があるが、こっちの方は逃げ回っているのだ、恐らく私の中でトップクラスの「すまん」であろう。
つぼみは、50個までは数えた。凄い。
育て方が良かったなどというはずはないから、これは生命の危機を感じて大量の子孫を残そうとしているのかもしれない。
助けてはあげたいんだが・・・。