人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子56歳。

本格的に、スマホ紛失・2

家に帰っても落ち着かないので、ネットでS作業所のことを調べてみた。

大した情報はないが、電話番号が分かったのだ。

そうか、電話なら何度も出向かなくても済む。早速かけてみるも、やはり出ない。

電話が通じたのは、午後1時になってからだ。

出たのは想像していたような、ぶっきらぼうなオヤジであった。

私は携帯をなくし、位置検索をしてもらったところそこの住所が出た、どなたか拾って下さってませんか、とできるだけゆっくり丁寧に話してみた。

オヤジは本当に「なんだそりゃ?」という感じで、「俺ぁ全然ここっから出てないし、そんなもんも拾ってないけどなぁ。」と泡食ったように答えた。

嘘ではなさそうだ。

前回の位置検索でも若干の誤差があったから、ズバリの場所ではなかったのかもしれない。

誤差があるとしたら、どこだろうか。

タクシーから家に帰るわずかな間に落としたと仮定するなら、あっちの工場地帯よりこっちの同じ住宅地の人が拾った可能性の方が高い気がする。

などとダンナと話していたら、さっきの工場から電話がかかってきた。今度は若い女性だ。

「あのー、携帯拾ったみたいですが、私のはここにあるんですけど??」

どうやらさっきのオヤジは、間違ってこの女性に伝えたのだろう。私はもう一度状況を説明した。

納得して電話を切ってくれたが、その後外で「携帯落ちてない??」などと聞いてくれる声が聞こえてきた。

S作業所は完全にシロだ。巻き込んでしまって申し訳ない。

その直後、S作業所と我が家の間に位置するご近所さんが、ワンコの散歩に出るところが見えたので聞いてみた。

全く知らない、との答え。

この調子でご近所全部聞いていくのもホネだ。

警察に届けて待つことにしよう。

近所の駐在さんは、無人であった。

電話が置いてあり、御用の方はこちらへ、とのこと。

かけてみると近くの交番に繋がったのか、「そこの駐在さんは夕方まで戻らないから、駅の方まで来れるならそっちへ。」とのことだった。

はぁ、面倒なことになったな。

しかし私はひとつの仮説を立てることができたのだ。

タクシーから降りて、携帯を落とす。

朝になってご近所さんが拾う。

私と同じように近所の駐在さんへ行く。

誰もいないので持ち帰った。

そんなところじゃなかろうか。

駅前の交番にしても大きな警察署にしても、ここからはちょっと遠い。

そのうちついでがあった時にでも、届けてくれるのではないか。

あまり心配はしていなかった。

警察署の方に紛失届けを出し、待つことにする。

1日経ち、念のためにもう一度位置検索をお願いしてみた。警察署の方にでも移動してくれていれば安心だ。

auのコールセンタースタッフは、「昨日も検索してますね。」と言い、「一度回線を切ってからだとそれから電波が途絶えますので、位置検索の精度は大きく落ちることが多いです。」と説明した。

まぁそれでもいい。大きく落ちないこともあるのだろうから。果たしてどちらなのか、判断のしようがないが。

今度は駅の近くに移動していた。

厳密な住所は飲食店と美容院の入るビルだったが、「大まか」であるなら交番もあり得る範囲だ。

ただ不思議なことに、「最後の検索結果」としての時間は、「前日の午前11時55分」であった。それって1回目と同じぐらいの時間じゃないか??ちょうど携帯は移動していたのだろうか。

それでも私は安心した。待ってればきっと、連絡が来るだろう。何なら駅に行ったついでに、交番で聞いてみよう。

ところで、ダンナはまた別の仮説を立てた。

私が泥酔した日のシメのラーメンは、この2度目の位置検索で出た住所の真向かいであった。

もしかしたらここに忘れたんじゃないか、と言う。

じゃあ、ウチの近所だった1回目の位置検索の結果は?と聞くと、ウチのすぐそばで、そのラーメン屋の店員を見たことがある。近くに住んでるんだ、と思った、と。

1回目の検索時間と2回目の検索時間とがあまりにも近いのでどう解釈していいのか分からないが、この近所にあることは間違いなさそうだ。

そもそもロックがかかって回線の止まった他人の携帯など、魅力のあるものではない。

そして持ち主が困っていることは、簡単に想像のつく品物である。

世の中には悪い人や困った人がいることも確かだが、割合としては非常に低いと私は思っている。

GPSの示した場所も、不安になるような場所ではない。

私は携帯の帰還を信じている。