人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

ゲーム界の孤独

「グランドアーマー、取れたよ。」

言うだけ言ってみた。

予想通り反応は無言、怪訝そうな顔でこちらを見返す娘ぶー子。

やはりゲームとは、世間のほんの一部の人間が楽しむ趣味であり、その内容の認知度は低い。

私が今プレイしているゲームは、ゲーム界ではトップクラスの誰でも知っているゲームになるはずなのだが、その内容の話ができるのはプレイヤー間だけに限られてしまう。

先日私は「グランドアーマー」という最強防具のひとつを非常に苦労して手に入れたのだが、この喜びを伝える相手も、この栄誉を称えてくれる人もいない。

ただの苦労ではない。言うのも恥ずかしいが、バグを利用した裏技で、特殊な取り方をしたのである。そのチャンス、実に2.4秒。

しかしこんな話は、真面目にすればするほど気持ち悪いものだ。だから誰にも言えずに悶々としていたのだが、どうしても我慢できずにダンナにだけは一から全部、詳しく解説しながら話してしまった。

もう返事だけ適当にしてくれればいい、聞いたふりでいいから、喋るだけ喋らせてと前置きした。ここまでしないと聞いてもらえる気がしないのである。

それでもまだ満足できなかったのだ。

そこでぶー子に言ってみたのだが、いきなりグランドアーマーと言われても戸惑うのは分かる。ここは想定の範囲内だ。

「最強防具が取れた。」と言い直すとぶー子は顔を写楽の有名な絵のように崩し、「はぁ?知らねーしEE:AE4E5」と言い捨てた。

「苦労して手に入れたのに、誰も分かってくれる人がいない・・・。」とボヤくと「気持ち悪いから!」とスマホに目を戻す。

否定できない。

私もいきなりゲーム用語とか出されたら、かなり引く。

しかしこのリアクションの酷さは何だ?

ホームランを打った、と言えば、すごいと言われるだろう。

ゴールをキメた、タイムを更新した、とりあえず「おお~」という感じにはなるだろう。

例えば訳の分からないカーリングでなんちゃらしたと言われても、説明されれば何となく「すごい」的な流れになるはずだ。

これがゲームだというだけで、説明すら恥になってしまうのである。

理不尽だ。

私は運良くグランドアーマーを手に入れたのではない。努力をして手に入れたのである。ホームランと一緒じゃないのか。

ついでに言うと、シカリのナガサFも大変だった。ゾディアークも苦労した。

あぁ、言えば言うほど気持ち悪いのが、自分でも良く分かる。

どうしてこんなにゲームの地位は低いのだろうか。思いのたけ、ゲームの話がしたいEE:AE4E5

ぶー子の反応が悪いので、諦めてキッチンで洗い物をすることにした。

ああ!?また汚れ物出しっぱなしッ。自分の分ぐらい洗えと何度も言っているのに。

「ちょっと!!これ洗ってよ!!もう何度言わせんのよもうEE:AEB30

大きく息を吸い込んで続きを言おうと思ったらぶー子は、「あ、そうだったゴメンゴメン、そういえばグランドアーマー取れたんだって??すごくね!?」と返してきた。

不覚にも、嬉しかったEE:AEB64

「すごいすごい」と言いながら皿を洗い出したので、何も言えなくなった。

こんな賛辞でも嬉しいのが、ゲーム界の孤独である。

私は今、出現率256分の1という敵を探している。

見つかったらものすごく嬉しいが、言う相手がいない。