<<自動投稿になってます。コメントのお返しが遅れますEE:AEAD9EE:AEAD9EE:AEAD9>>
午前2時。プレステの電源を落とす。
今日こそは早く寝ようと思っていたのに、またこんな時間になってしまった。
ここのところはハッキリ言いたいが、ゲームの時間が延びているのではない。全体的に時間が遅くズレこんでいるのである。
ズレこんでなかったらゲームの時間が延びていただろうが。
歯を磨き、窓を閉める。おっと、シャッターが半分開いていた。
両腕を上げてシャッターをつかんで力を込めたその瞬間。
ちょーーーーーっと待った!!
あっ、あぶねー、ウッ、しかし。
シャッターの真下には、大きな蛾が1羽、とまっていたのである。
このままシャッターを下ろしたら、潰してしまう。こんな大きな蛾を潰したら・・・、グエッ・・・、などと考えているうちに、蛾は家の中に入ってしまった。
なんてこった!!蛾は飲酒運転の車のように、フラフラとあてどもなく飛んでいる。
昔はキャーキャー言っていた虫もずいぶん慣れたが、蛾はダメだ、こんなに大きいのは特別ダメだ、そんなのが、あてどもなく飛んでいるのである。あてどもなく。
私も相手の動きを見ながらあちこち逃げ回る。
どうしよう、とんでもないことになってしまった。かと言ってどうすれば良かったのか。
潰すよりはマシだったのだ、これは最善の流れなのである・・・(泣)
とは言え、どうする?
蛾から逃げなくてはならないので、私の行動は蛾によって完全に制限されている。
閉めかけのシャッターを閉めるのも、部屋の電気を消して回るのも、携帯を取ってきて猫を寝室に連れて行くのも、蛾の行き先次第なのである。
もう全てを放棄して寝てしまおう。今夜の添い寝相手を見ると、なんとエルは果敢に蛾に飛びついていた。
もともとは野生動物である。猫は動くものには興味を示し、ちょっかいを出すのが常だ。
そして7センチ程のヒラヒラした物体が、フラフラと部屋の中を舞っている。
「蛾」も「気持ち悪い」も「怖い」もないのである。ただ動くそれを、本能的に狩りたいだけなのだ。
正直に言う。
それを見て私は、「やっちまってくれ」と思った。
自分ではどうにもできない、かといって、いてもらっては困る物体。
誰かが始末してくれれば、そんなに楽なことはない。
私は寝ていた大五郎も起こした。
2匹の猫の戦闘体制は、残りの2匹も目覚めさせた。
結果、蛾は4匹の猫に追われることになった。
飛んでいるので決定打はなかなか入らない。
蛾は時々、猫にパシッとはたかれていた。
蛾は死ぬだろうか。逃げ切るだろうか。
どちらにしても、私は非常に暗い気持ちであった。
後者なら、明日になって突然どこかで鉢合わせることになる恐怖。
そして前者はもっと複雑な気持ちであった。
手を下すのが猫であっても、これは私が殺すも同然である。
なぜ殺す?
怖いから殺す。
怖いから、という理由だけで命を奪うこと。
あの蛾は、私の命を脅かしているか?
私の生活をそんなに脅かしているか?
この場合の「怖い」は、もっと単純な「怖い」である。
嗜好とか生理現象とかいった、理由を持たない恐怖。
極端に言えば、私が気に入らないから殺すのである。
私は蛾をこの部屋から出す方法を考えた。
しかし私は近づくことすらできないのである。
長い虫取り網でもあればいいが、あんな予測不能の動きをする恐怖の7センチ、私が一定の場所にいざなうのは難しい。
どうしよう、どうしよう、と考えているうちに、蛾はみるみる弱っていった。
小さな命である。ちょっといじくり回されるだけで、こんなに弱ってしまうのである。
もう飛ぶこともできず、床に落ちて弱々しく羽を動かしている。
やがて死ぬだろう。
床にうごめいている蛾を、4匹の猫が囲んでいる。
蛾であるというだけで、こんなことになってしまったのだ。
「気持ち悪いから殺していい」という権利を、私は誰かから授かった記憶はない。
それなのに、蛾であるという理由だけで、私は殺してしまうのである。
格好つけんなよ、もっと平気で殺しているものがいっぱいいるじゃないか。
私はゴキブリを殺すのをためらった事があるか。
目の前を飛んでいる蚊を握りつぶして、その反射神経を自慢したことがあるだろう。
人間以外の生物を生かすか殺すかのボーダーは、気づかぬうちにみんな自分で作り上げているのである。
しかし、少なくとも蚊やゴキブリは人に害を及ぼす。
果たして「気持ち悪い」を死のボーダーに入れることは、正しいとは思えない。
いくら相手が気持ち悪くても、自分よりも強ければ、私は殺すことができない。
これは、圧倒的に自分が強いからこそできる傲慢である。
そしてこんな出来事は、きっとすぐに忘れてしまうだろう。
かといって、あの状況でどうしたら良かったのかといくら考えても、何も思いつかない。
その代わり、あの状況をどうにかできるアイテムを思いついた。
虫取り網を常備することにする。
これで今後、いくらかの小さな命を救えることを願う。