いよいよ追い詰められてきたラスコーリニコフ。
彼の殺人を信じて疑わない予審判事のポルフィーリイ、彼を利用して彼の妹を手に入れようとするスヴィドリガイロフ。
そして彼を信頼してどこまでも寄り添う妹のドゥーニャ、薄幸の娘ソーニャ、友人ラズミーヒン。
しかし彼は、全く悔いていないのである。
彼を苦しめるのは「正しいはずの自分に負ける」という意識であった。
世の中を構成するのは、大多数の「従うだけの無能な人間」と、一握りの「有能な先導者」であり、後者は世の中を正しく動かすためにはどんな罪も許される。
ラスコーリニコフはそう考えており、後者の人間になろうとしたのである。
しかし彼は自分に負けた。
彼が取るべき道は自首か、逃亡か、自殺か。
とにかく心理描写が面白く、ポルフィーリイとの心理戦は見事であった。
まるで狂人のようなラスコーリニコフの思考も、違和感がないから不思議だ。
どこまでも不幸なソーニャ、ドゥーニャをめぐってあれこれ手を回す婚約者のルージンとスヴィドリガイロフの運命も目が離せない。
読み辛い長編だが、最後まで楽しむことができた。
しかし誰もが同じ感想を持つとは思えない作品である(笑)
「思想」や「心理」などに関心がなければ、クドいだけの話になってしまうかもしれない。
ぽ子のオススメ度 ★☆☆☆☆~★★★★☆(人によるだろうなぁ。)
「罪と罰(下)」 ドストエフスキー
新潮文庫