人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子56歳。

北緯26度16分、東経50度39分

娘ぶー子が新しい職に就いてから、約3週間。

今度の職場は人数が多いので、人間関係に馴染めない、と良くため息をついていた。

学校のような大きな組織が苦手なのである。

また、仕事の指導をしてくれる上司がいい加減なタイプで、それも苦痛だと言ってグチッている。

しかし社会とはそのような人間込みで構成されているものなのだ。

気の合う人間ばかりではない。

これもまた、修行のうちである。

そんな中で、清掃を担当している外国人とは気が合うらしく、それを小さな救いにしているようだ。

勤務地は新宿である。韓国、中国、マレーシア、実に多彩な国の人間が、清掃に就いているらしい。

「珍しいところでは?」

「バーレーンEE:AEAA6

バーレーン・・・、それはどこにあるのか。

私には月ほど遠い国である。

そんなバーレーンと食事をしてきたそうな。

そいつは楽しそうだね。

「うん。楽しかった。・・・口説かれるまでは。」

口説かれたんかい(笑)

それは「今夜」ということか、「今後」ということか?

「いやもう、めっちゃマジメにすげー愛してますと。」

まだそれ程親しくもなかろうに「愛してます」とは凄いが、とにかく向こうの人である、アタックがハンパじゃないらしい。

ぶー子はまるでそんなつもりはなかったようなので「友達としてしかつき合えない」とハッキリ言ったらしいが、「いつまででも待つ」「必ず幸せにする」「他のヤツに渡したくない」とまるで引かないバーレーン。

・・・・・。

「そこまで言われてグラッと来んのか、あんたは。」そうだ、正直ちょっと羨ましい。

「はぁ?好きな人なら嬉しいけど、何とも思ってないし。」

「それでもそんな熱烈告白されたら、ちょっとは心が動くもんじゃないか?顔は?」

「悪くない。でも好みじゃない。」

「背は?」

「まぁ普通。」

「スタイルは?」

「まぁ悪くない。でも・・・、」

「でも?」

「胸毛が・・・EE:AE4E6あーゆーの、ダメ・・・。」

「ワイルド、と思えないか。」

「うー、そういう言い方もあるけど、私、あんなに自信持ってる人は、苦手だ・・・。」

分からなくもない。

一体彼は、ぶー子の何を知っているというのか?何を根拠に幸せにできるなどと思っているのか?

いや彼は外国人である。もはやこれはハンティングに近いのかもしれない。

言葉に意味はない、振り向かせるための装飾品のようなものなのだろう。

バーレーン曰く、女性は太陽であり、そのために尽くすのが男なのだそうだ。

「日本では女のヒト、男と同じに働いて可哀相ネ。給料も少ないネ、それなのにワリカンとか、日本人、オカシイヨ。」

食事中も、飲みものは彼が全てとってきてくれ、タバコをくわえれば火をつけ、ホスト並の応対だったとか。

「あんた・・・、それ・・・、私に紹介してよ。

しかし愛もなく、胸毛がボーボーだという事は、決定的に我が家の遺伝子と結びつかないのである。

惜しい。