毎日掃除機をかけるほどマメではないが、本来は毎日掃除機をかけなくてはならない部屋である。
夏だ。
私達の衣替えはとっくに済んでいる(今年は)季節だが、猫たちも衣替えに忙しいのである。
暖かくなるにつれ抜け毛が増えてくるのだが、4匹もいるのだ、尋常ではない。
カッカッカッと後足で首を搔けば、舞台効果のようにチラチラと舞う毛。
2匹がケンカをすれば、「50回搔いた」ぐらいの毛が抜ける。
なでれば面白いように抜けるし、放っておいても風になびいて抜けてくる。
そんなのが床の上を常にフワフワしているのである。
テーブルの上もまた然り。
暑いので、彼らは冷たい所で寝たがるのである。
床とテーブルは恰好のベッドなのだ。
それだけではなくイスの上、コンポの上、テレビ台の上・・・、気分に合わせて様々な場所で彼らは寝る。
様々な場所で抜け毛が舞う。
しかし掃除機をかけても、すぐに毛は抜けるのである。
これは元から断たなくてはだめだと気付き、掃除機と猫のブラッシングをセットにした。
たかがブラッシングと思っていたが、これが結構大変で、ますます掃除機が億劫になるのであった。
大人しくブラシをかけられてくれるのは、ラだけである。
彼女はなかなか好きなようで、他の子を先にやると割り込んでくる程だが、さすがにしつこくやり過ぎると噛み付いてくる。
しかしだ。
「死毛まで搔き取るバカ抜けファーミネーター(あ、ネーミングは後付けです)」というすごいブラシを、1万も出して買ったのだ。
これはホントにすごい。
生えてる毛も抜いてるんじゃないかという程、いっくらでも取れる。
つまり止め時がないのである。
ちなみに、今はもっと安く買えるようなので、毛の生えた家族のいる方はぜひお試しあれ。
たっぷり時間をかけてラの毛をこそげ取ると、次はミである。
先住を立てての順番ではない。嫌がらない順だ。
ミは、頭をなでながらやれば、結構耐えてくれる。
そして、もの凄い抜ける。
ラの3、4倍はあるだろうか。
もうガッポガッポ抜けるので、面白くて仕方がない。
別に金になる訳でもないのに毛が抜けるのがこんなに楽しいなんて、人間は不思議な動物である。
ミはラほど忍耐強くないので、そのうち逃げる。
いまだに「取り尽くした」と思って終わったことがないが、その去り方はいい女のそれと似ていて後を引く。
次はダイだ。
一番大きくて一番暴れん坊のダイは最後にと思っていたが、どうやらブラシを本気で憎んでいるエルよりはやりやすいことが分かってきたのだ。
ダイも嫌がりはするが、そのイライラのはけ口があればある程度は耐える。
なので側に爪研ぎを置くか、私の手を噛ませてやる・・・、自分の体を子供に食べさせるカマキリのオスのような美しい行為である。
まぁせいぜい5分か。
しかしあまり抜けないのだ。
行きやがれ。
エルはもう、ひと搔きでガブリ、だ。
なので2本足で立たせて前足を私が握るのだが、体をよじってにっくきブラシみ噛み付こうとグネグネする。
その口と反対側にブラシを持って行くように搔くのだが、やがてひっくり返って抗議する。
そこまでである。
せいぜい3、4搔きだが、不思議とエルもあまり抜けないので、行きやがれ。
人も動物も、歳を取ると毛穴の根性がなくなってくるのだろうか。
そんなんで、ブラッシングのメインは最年長のラとミなのであった。
これで30分だ。もう明日はやりたくない。
だから掃除機も億劫になるのだ。
しかし終わるとこちらは全身毛だらけ、床には綿ぼこりのような毛の塊がいくつも転がっている。
これを1日やらないと、あの子達の毛皮はどうなるのだろうか?
長い夏の始まりである。
追記*オスのカマキリを食べるのは、妻であった。ガーン!!