人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

ウィーンの密使 / 藤本ひとみ

「マリー・アントワネットの恋人」と改題されているかもしれない。

私は古本屋でこれを買ったので、詳しいことは分からないが。

西洋史を題材にした小説を数多く書いている作家である。

私はあまり歴史に興味はない方だが、ベルサイユのばらの影響で、フランス革命にだけは興味があり、良く読んだ。

なのでこの作家の作品も、初めてではない。

歴史的事実に上手くフィクションを絡め、ドラマティックに仕上げられているものが多い。

どの辺までが事実なのか気になってしまうが、読んでる間は夢中である。

ウィーンからの密使として、革命の起こる直前のマリー・アントワネットの許に遣わされる主人公ルーカス。

革命が起これば、アントワネットの故郷オーストリアにも被害が及ぶかもしれない。

国庫も国民も自分のものと言って憚らず、贅沢の限りを尽くしてきた彼女は今、非常に危険な立場にいた。

何とか彼女に「一国の王妃」としての自覚を持ってもらい、革命を未然に防ぐのだ。

そしてルーカスは、かつて愛したアントワネットの許に向かう・・・。

ルーカスは架空の人物のようだが(勉強不足で申し訳ないが、検索しても上手くヒットしないのである)、非常に頭の切れる、冷静で駆け引きの上手い男である。

いくつもの危ない橋を渡り、いくつもの勝負に出て、危険を感じればサッと方向を変える。

そのあたりがフィクション臭いが、上手い具合に歴史の事実にはめ込んであるのが面白い。

実在したラファイエット、ミラボーなどの間を渡り歩き、最後にはロベスピエールに思いもかけない一撃を食らうことになる。

そのくだりは非常に衝撃的で、感動的だ。

果たしてアントワネットがどうなったかは皆さんご存知の通りだが、結果はそこではない。

ルーカスは国を裏切るのか、自分を裏切るのか。

最後の最後まで、ルーカスの選択から目が離せない。

ぽ子のオススメ度 ★★★★☆(下地がないとキツいかも)

「ウィーンの密使」 藤本ひとみ

講談社文庫 ¥800(税別)