人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

さよなら、ぴーちゃん

不安だった。

ぴーちゃんは夜になるとほとんど食べなくなり、目を閉じたままじっと動かなくなってしまった。

私はネットで調べだした通りに部屋をガンガンに暖め、バスケットにタオルを掛けてそれを寝室のベッドに乗せていたのだが、どんどん大人しくなるので不安で仕方なかった。

室温は30度近く、これでは私が眠れないので、隣の音楽室を暖めてそこにぴーちゃんバスケットを置いて寝る事にした。

結果的に音楽室のほうがエアコンの効きが良かったので、悪い選択ではなかったと思う。

それでも心配だったので、ペットボトルにお湯を入れてタオルにくるみ、バスケットに入れておいた。

ヒナの体温は40度にもなるという。

人間の体感温度で判断すると、全然低いらしいのである。

目覚しが鳴る前に、目が覚めた。

6時前であった。

ぴーちゃんが気になり、ご飯を作ってすぐに真夏日の音楽室へ向かう。

バスタオルをめくる。緊張の瞬間だ。

ぴーちゃんはその気配で目を覚まし、パッチリと目を開けた。パッチリ。

昨日の夜とは全然違う、「おはよう」という顔である。

ネットで調べて知ったが、夜は寝かしておいていいらしい。

とは言っても元気がないようで心配だったのだが。

手をそばまで持って行くとすぐに大きな口を開けたので、その中にシリンジですり餌を突っ込む。

ちなみにシリンジは、以前に動物病院からもらった、猫の採尿用である。

相変わらず鳴きもせず小食だが、いい表情に見えた。

毛づくろいまでしているので、私はすっかり安心した。

・・・したが、問題はこの先である。

親元に返せるのか?

気がつくと外で、鳥が大きな声で鳴いていた。

もしかして、と窓を開けてみると、やはりヒヨドリであった。2羽。

親だろう。

私はぴーちゃんのバスケットを抱えて、急いで庭に出た、

出て昨日のように木の枝に引っ掛けたが、ぴーちゃんが鳴かないので親が気づかない。

しばらく出しておいたが、まだ肌寒かったので音楽室に戻す事にした。

それからも親鳥は、何度も何度も鳴きながら、探しているようであった。

ちょこちょこご飯をあげていたが、そのうちぴーちゃんがピィピィと可愛らしい声で鳴くようになった。

おうっ、外も暖かくなってきたし、いよいよ本気出して再会に挑むときが来たようだ。

親鳥はピーちゃんの声を聞くと、すぐにそばまで飛んできた。

分かるのか。ぽ子は感動した。

しかしそこからが膠着状態である。

深いバスケットに入ったぴーちゃんはそこから身動きできず、親鳥も中までは入る気配がない。

じっとしてられず、私は再び庭に出てぴーちゃんを手ですくい出した。

するとちゃんと人差し指に止まり、しっかり立っている。

親鳥はその間も鳴きながら周りを旋回していたが、ぴーちゃんと親鳥の距離は縮まらない。

思い切って木の枝にとまらせてみた。

ヒナを保護して巣が見つからなかったら、木の高いところにとまらせるといいという情報があったのを思い出したのだ。

ぴーちゃんは大人しく木の枝に移ったと思ったら、次の瞬間、バーッと力を振り絞って飛び立った。

低空で危うい飛び方であったが、一気に目の前の空き地に消えた。

と同時に親鳥2羽もすぐに後を追った。

もう大丈夫だろう。

一番いい結果になったのだと思う。これで良かったのだ。

しかし、実はちょっとぴーちゃんを飼いたい気持ちもあったのも否めない。

いい結果だが、ちょっぴり残念でもある。

その後洗濯物を干しにベランダに出ると、空き地に親鳥が2羽、飛んだり休んだりしているのが見えた。

そのうち1羽がこちらに飛んできて、目の前の電線にとまって「ピーピー」としばらく鳴いて去っていった。

「ありがとう」と言っているようだった。

・・・・・が、「この誘拐犯め!!」かどうか、分からないが(笑)

    

***ここにコメントをくれる方は、生き物に優しい目線の方ばかりなので、本当にぽ子は励まされ、勇気をもらいました。

エルの時もそうでしたが、みなさん、ありがとうございました!***