人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

36%の後悔

母の日である。

母を家に呼んだ。

正月ですら会ってないのだ。半年振りぐらいか。

私は目下ハマッているカフェ飯のレシピ本から「豆腐とアボカドの丼」と「スモークサーモンのフレッシュサラダ」をチョイスし、豆乳のヴィシソワーズと組み合わせた。

しかし、キッチンの片づけをしただけで疲れてしまったので、カフェ飯はただの冷やしうどんに変更である。

近所のスーパーにうどんを買いに出たら、店内で試食販売をやっていた。

魚介のハンバーグである。イワシとかタコとか。大豆もある。

以前似たようなものを買ったが、結構美味しかった。

柔らかいし、これをおかずにする事にした。焼くだけ。

「良かったらどうぞ~~!」

売り場に行くと早速、試食の爪楊枝を差し出された。

タコとイワシの2種類が刺さっていた。・・・うまい♪

「ほら、こうして焼くだけでいいんです。スープに入れるときは・・・。」食べている間に彼は商品の説明をする。

タコがおいしかったからタコにしようか、と決めかかったところで、「これも食べてみて下さい!」と小さな容器に入ったイワシのつみれが入ったスープを手渡された。

つみれがムチャクチャ柔らかい。

しかしうまいが、タコのハンバーグがあればいい。

・・・と言おうと思ったら「ハイハイ、もっと食べてください!!」とまた爪楊枝をもらってしまった。

「今度のは何ですか??」

「・・・スミマセン、さっきと同じタコとイワシです・・・。真ん中に刺さってるのは爪楊枝です。」ハハハ、だろうね。

美味しいよー。やっぱタコに決定。

・・・と思ったら「これが大豆のハンバーグです。」とまた楊枝を手渡された。

出されると反射的に「そう?」と食べてしまうのがぽ子である。

うん、これもサッパリして美味しいけど、やっぱタコだねー。

「タコのハンバーグを下さい。4枚入りので。」ちょっとあればいいのだ。

「はい、ありがとうございます!!」

若い笑顔が素敵な彼は、冷凍庫の中からタコのハンバーグを手に取った。

手に取って、こっちを切な気な目で見ながら「もうひとつ・・・いかがですか?」と申し訳なさそうに言った。

ええ!?きたな(笑)

私はダンナと顔を合わせて曖昧に笑ったが、彼は哀願するように見つめている。

「じゃ、もう1つ買うか。」冷凍だし、味は美味しいのだ。

イワシのハンバーグを追加。

「ありがとうございます!!」彼の顔がパァッと笑顔で輝いた。

彼は包装の袋に2種類のハンバーグを入れると、「あの・・・つみれも買っていただけましたら、タコのハンバーグを1枚おつけしますが・・・。」と上目遣いにこちらを見た。

ギャハハ、いらないっつの、もうそんなに。

「・・・いかがですか・・・?」

沈黙が横たわる。

実際には大した時間ではなかったのかもしれないが、「断る」という重大な任務の前には長い沈黙であった。

「・・・じゃ、下さい(汗)」・・・負けた・・・。

「ありがとうございます~~~!!じゃ、こちら、おつけしておきますね、タコのハンバーグ♪」

彼はラップで包まれたタコのハンバーグを軽く持ち上げてこちらにアピールしてから、ニコニコと笑顔で袋にそれを入れた。

どーすんだよ、魚介のハンバーグばっかそんなに。

いつからそんなものがそんなに好きになったのだ?

タコのハンバーグ。だせーな。

まぁとは言え、タコのハンバーグ1枚分得はしたのだ。

食べきれば損ではない。

買い置きである。

将来の分を前倒しで買ったのだ。

ここのスーパーは最近、「セルフレジ」という、自分でスキャンするレジのコーナーが出来た。

子供のお買い物ごっこ遊びの場になっているが、それでも普通のレジに並ぶより早いので、私達はいつもこっちに並んでいる。

もちろん私は「ピ」とやりたいのでスキャン担当であり、ダンナは私がスキャンしたものを受け取って袋に入れる地味な役である。

ピ、ピ、と気持ち良く商品を通していると、私も子供と対して変らないんだなぁと思う。

そして。

「ピ」

「1800円です。」

値段を告げるのはレジの音声である。

いちいち商品の値段を教えてくれるのだが、は?1800円??

それは、あのハンバーグであった。

私は愕然とした。

ヘラヘラと言われるがままに買ってしまったハンバーグだが、1800円?!

アホか(泣)

タコのハンバーグ1枚多く欲しいがために、1800円分ものハンバーグを買っていたのだ。

今日の買い物は5000円であった。

そのうちハンバーグが36%を占めているのだ。

ちなみにこの36という数字を導き出したのは、もちろん私ではなくダンナである。

昼には母と3人で、冷やしうどんとそばとタコのハンバーグを食べた。

母は久しぶりに会ったからか機関銃のように喋りまくり、実に4時間近く、私とダンナは修行のように相槌を打っていた。

ところでこのところ祝われなくなっていたぽ子であるが、珍しく娘ぶー子が夕方に帰ってきた。

カーネーションとケーキ。

寿司。

ぶー子と私の名誉のために言うが、一応今年は無事に母の日を終えることが出来たようである。