人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子56歳。

PARTY IS OVER

娘ぶー子の塾のせいで、外飯が飛んだ。

急遽買って来た、惣菜づくしの誕生日パーティである。

とにかく私もぶー子もサプライズ好きなので、急なりに色々考えたのだが、ぶー子が音楽室でやろうと言い出した。

なるほど、多分用がなきゃダンナは入らないだろうから、飾りつけなんかしてもわからないだろう。

かくして、ダンナが帰ってからも、そ知らぬ顔をしてぶー子と音楽室の準備をしていた。

進行具合を見にちょっと部屋を覗いてみると、なぜか真っ暗。

その中でぶー子がしゃがみこんで脅かそうと、ダンナを待っていた。

地味なサプライズである。

まぁパーティと言っても、ただ食って飲むだけである。

しかしいつもと部屋が違うだけで、気分が盛り上がる。

BGMはブー子がチョイスした。

「誰これ?」

「ザ・フー。・・・と書いてあった。」

「なじょして?」

「いやぁ、おとんが好きそうかなと。」

「・・・これ、本当にザ・フーなの?」

「・・・と、MDには書いてあった。」

「これはもしかして、ザ・フーではないんでないの?」

「そうなの?ザ・フーって書いてあったんだけど。」

私達はMD中盤に入るまで、ベックをザ・フーだと思って聴いていた。

いつまでも、疑う事をしらない純粋な家族でありたい。

酒が進むにつれ、BGMの方もリクエストが入るようになる。

MDを聴いていたが、機械の機嫌が良ければCDも聴ける。

試しにディスクを入れてみる事にしたのだが、入れっぱなしになっていたディスクを出したぶー子は「ああっ!!」と言ってこっちに向き直り、「これは・・・泣けます。」と言った。

ぶー子が中から出したディスクは、英検のリスニングCDであった。

「ここで勉強してたんだね。マジ泣けますね。」

そう繰り返してから新しくディスクを入れる。

ベックからHIPHOP、HIPHOPからジョンレノン、ジョン・レノンからグレゴリア聖歌へ、聖歌からジャズへ。

ぶー子、突然ピアノのイスの上に立ち上がり、黒人ゴスペラー風に体を揺さぶって歌い出す。

彼女はシラフである。

「立食パーティにしよう。」

ダンナも立ち上がる。

なぜ急に立食に!?

イスが座りにくいと言うが。

飾りつけのミニツリー、良く見ると100均の札が付けっぱなしであった。

買ったのはおととしである。

誰も今まで気付かなかったのか。

酔いが回ればお決まりの演奏会である。

まるで土曜日のようなフザケっぷりだ。

こうしてダンナの誕生日は過ぎていったのである。

朝になり、日常が戻る。

幸い二日酔いがなかったので洗濯なぞしてみた。

洗濯物を干すには音楽室を通るのだが、ドアを開けてみると昨日の残骸がそのまま残っておった。

午前中の明るい日差しの中に、宴の余韻。

ゲー、片付けだ。

床にはポツンと焼酎のパックとクラッカー。

PARTY IS OVER。

祭りは終ったのだ。