娘ぶー子の塾のせいで、外飯が飛んだ。
急遽買って来た、惣菜づくしの誕生日パーティである。
とにかく私もぶー子もサプライズ好きなので、急なりに色々考えたのだが、ぶー子が音楽室でやろうと言い出した。
なるほど、多分用がなきゃダンナは入らないだろうから、飾りつけなんかしてもわからないだろう。
かくして、ダンナが帰ってからも、そ知らぬ顔をしてぶー子と音楽室の準備をしていた。
進行具合を見にちょっと部屋を覗いてみると、なぜか真っ暗。
その中でぶー子がしゃがみこんで脅かそうと、ダンナを待っていた。
地味なサプライズである。
まぁパーティと言っても、ただ食って飲むだけである。
しかしいつもと部屋が違うだけで、気分が盛り上がる。
BGMはブー子がチョイスした。
「誰これ?」
「ザ・フー。・・・と書いてあった。」
「なじょして?」
「いやぁ、おとんが好きそうかなと。」
「・・・これ、本当にザ・フーなの?」
「・・・と、MDには書いてあった。」
「これはもしかして、ザ・フーではないんでないの?」
「そうなの?ザ・フーって書いてあったんだけど。」
私達はMD中盤に入るまで、ベックをザ・フーだと思って聴いていた。
いつまでも、疑う事をしらない純粋な家族でありたい。
酒が進むにつれ、BGMの方もリクエストが入るようになる。
MDを聴いていたが、機械の機嫌が良ければCDも聴ける。
試しにディスクを入れてみる事にしたのだが、入れっぱなしになっていたディスクを出したぶー子は「ああっ!!」と言ってこっちに向き直り、「これは・・・泣けます。」と言った。
ぶー子が中から出したディスクは、英検のリスニングCDであった。
「ここで勉強してたんだね。マジ泣けますね。」
そう繰り返してから新しくディスクを入れる。
ベックからHIPHOP、HIPHOPからジョンレノン、ジョン・レノンからグレゴリア聖歌へ、聖歌からジャズへ。
ぶー子、突然ピアノのイスの上に立ち上がり、黒人ゴスペラー風に体を揺さぶって歌い出す。
彼女はシラフである。
「立食パーティにしよう。」
ダンナも立ち上がる。
なぜ急に立食に!?
イスが座りにくいと言うが。
飾りつけのミニツリー、良く見ると100均の札が付けっぱなしであった。
買ったのはおととしである。
誰も今まで気付かなかったのか。
酔いが回ればお決まりの演奏会である。
まるで土曜日のようなフザケっぷりだ。
こうしてダンナの誕生日は過ぎていったのである。
朝になり、日常が戻る。
幸い二日酔いがなかったので洗濯なぞしてみた。
洗濯物を干すには音楽室を通るのだが、ドアを開けてみると昨日の残骸がそのまま残っておった。
午前中の明るい日差しの中に、宴の余韻。
ゲー、片付けだ。
床にはポツンと焼酎のパックとクラッカー。
PARTY IS OVER。
祭りは終ったのだ。