酔っ払いとは、恥知らずなものである。
羞恥心はなくなり、変な勇気がみなぎるために、やらなくてもいいような事をやってしまったり話してしまったりする。
やっちまった。
昨日娘ぶー子が塾から帰ったのは、日付が変わって12時半を過ぎた頃であった。
私はずっと飲んでいたために、かなりひどい酩酊状態であった。
しかしぶー子は「塾ハイ」で機嫌良く、機関銃のように喋り出した。
もはや何を話していたのかすら思い出せないが、とにかくハイテンションなぶー子と酔っ払いの組み合わせである。否が応でも盛り上がる。
そしてここで私は「自分の娘に、空想の内容を話す」という、とんでもない恥さらしをしてしまった訳だ。
空想については何度も書いているが、ぽ子には幼い頃から空想癖がある。
40になった現在も健在で、寝る前、自転車をこぎながらと、その夢は果てる事はない。
そう、夢。
その空想の内容は自分で自由に創り上げるため、とても自分に都合の良いストーリーとなっている。
そして、人に見せたり聞かせたりする必要がないため、どこまでも下らないサクセスストーリーばかりである。
しかし、よりによって自分の娘に話してしまうようなヘマをしたのには、ちゃんと理由があった。
先にあっちが話し出したからである。
やはり血の繋がった娘である。誰の指導があったわけでもないが、彼女もしっかり「その道の人」になっていた。
しかし時代の流れか彼女のオリジナリティか、私のそれよりもっと手の込んだものである。
何とBGMも決めてあり、その中での動きまで曲に合わせて決まっていた。
その時、テレビで音楽番組を観ていたかコンポで曲を流していたかでこの「空想話」にトピックがいざなわれていったのだが、ぶー子は改めてコンポから曲を流しながらフリを入れ、セリフを語り、ストーリーの解説をした。
私に負けず劣らず下らなく、こっ恥ずかしいストーリーである。
ある時は「GetWild」をバックにテロリストとして学校に乗り込むが、『何も怖くはない』の部分で拳銃を上に向けて登場する。
そのポーズも忠実に再現するが、キメ過ぎで爆笑である。
後はほとんど「ごくせん」ばりのケンカばかりである。
Soul'dOutの「Alive」は、歌が入るとピョンピョン言って使えないので、イントロのみというのもシビアな話だ。
ぶー子の空想界に、妥協は許されていない。
そこから「エアボ」に話が流れていった。
「エアボ」とは「エア・ボーカル」、つまりエア・ギターの応用であり、正確には「エアヴォ」であろう。
ぶー子は次に、「東京事変」の「遭難」をエアボで歌い上げた。
それを見ている間に酔っ払いぽ子はもう決めていた。
「エアピ」である。
奇遇にもこの頃なぜかブルー・ハーツの「TrainTrain」をライブで弾く空想が熱かった。
これじゃん!!
空想を現実にできるぞ!!ちょっとだけ。
ぶー子の椎名林檎が歌い切ると、私は音楽室に走った。
あれはどこにあったっけな??
CD、違う、MD、多分違う。
かなり古いのだ。カセットである。
執念で100本近いカセットテープの中から探し出したが、コンポがカセットに対応していなかった。
しかしそんな時にはYouTubeである。
私はパソコンのYouTubeでブルー・ハーツの「TrainTrain」を流しながら、パソコンデスクをピアノに見立てて演奏した。
「エア」ものは、不可能を可能にする。
ミストーンの不安などない。
私は酔っている。
こんなに・・・、
こんなに気持ちいい世界があったとは。
酔っ払っているので羞恥心など全くない。
私は本気で弾いた。
最初は抑え気味に、途中から立ち上がって叩くように弾いた。(本当はイスを蹴りたかった。)
この曲はグリッサンドや乱れ打ち(命名・ぽ子)が多く、シンプルながら非常に高揚感を得られる曲である。
曲が終わった時にはハァハァと息が切れていた。
さっき起きて来たダンナとシラフのぶー子は呆気に取られていたが、構うもんか。
それと引き換えに素晴らしい時間を過ごしたのだ。
朝になった。
私はしょうもない空想の内容をぶー子にバラしたことを心から悔やんだが、エアピについては全く後悔はない。
これからもガンガン弾いていく予定だ。
もっとハードルを上げてジャズなんかやってみようかと思う。
皆さんにもぜひこのエアもので、開放感を味わって欲しい。