そこにあるべき姿は、もうなくなっていた。
私は最後の戦いに備え、充分な作戦と戦意を携えてそこに赴いたのだが、そこに残されていたのは抜け殻の戦場であった。
確かに最後にここを後にした時のまま、時を止めていたが、全てが色褪せてすでに朽ち始めていた。
あの時、完膚なきまでに攻撃しつくしたこの場所には、そもそも形のあるものなどほとんど残ってはいなかったが、脅威であった大砲、地下にめぐらされた強固なパイプラインに、最後の鉄槌を下しに来たのだった。
しかし、いまや大砲は倒れて色を変え始め、私はただ、主のいなくなったパイプラインを呆然と崩していく。
WAR IS OVER。
辛うじて立っていた大砲が、風に吹かれてかすかに揺れた。
カタバミフィールド。
その場所がこの世から消えても、私の歴史から消え去る事はないだろう。
BGM:GOOD NIGHT SAIGON/BILLY BOEL