人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

愛のかたまり

「え・う♪」

相変わらずダンナの「えう熱」は冷めず、溺愛の毎日である。

毎日「えう、かわいい~~♪」と遠くから眺め、「えう、どうしたのぉ?」とどうもしてないエルを撫で、下僕、奴隷以下の状態になっている。

ところでダンナはどうやら「えう」と「エル」をうまく使い分けるところで落ち着いたが、私の方は現在「エルちゅう」という呼び方が気に入っている。

娘ぶー子は「えっちゃん」「えっ太」と田舎者風に。

しかしエルによる言語の乱れは、他にも様々な部分に及んでいる。

この頃夫婦でハマッているウォーキングだが、普段ほとんど喋らない分、ここでは良く喋っている。

「うんうん。」

「それで?」

「ほー。」

「まじで~?」

会話をするにあたって、相槌は重要な役目を果たすものである。

「聞いてますよ。」

「興味がありますよ。」

「もっと話してください。」という意思表示であり、これがあまり単調になると、真剣に聞いていないような印象を与えてしまう。

そこで私はこの頃「リアリ~?」という相槌もバリエーションに入れたのだが、ある日のウォーキングの会話でも、ありがたくそれを使っていた。

「リアリ~?」

「エル。」

??

あれ?何か聞き間違えたか?

「リアリ~??」

「エル。」

「今、何つった??」

私は耳が遠いので、良く相手の言葉聞き取れない事がある。

3度も言わせてごめん、と思ったが、

「エルって言った。」

ダンナはハッキリそう言った。

あまりに唐突にエルの名前が出てきて、前の会話との接点を見出せず戸惑っていると、

「『YES』って意味なの。『エル』は。」

彼はサラッとこう言った。

エル・アイドゥ~~(泣)

わかりました、覚えておきます~~~!!

しかし「エル」の意味するところはそれだけではなかった。

ヨークマートで買ってきた「クリーム大福」を食べた時には

「エルうま~~~!!」と言ったし、

これには「『エル』には『最上級』の意味もある。」と解説していたが、比較級に使った事もあり、もう彼もこの言葉の乱れを制御できないようである。

いや、言葉だけではない。

彼自身が乱れてきている。

先日新宿で食事をした帰り、繁華街を駅に向かっていると、先を歩いていたダンナがピタッと立ち止まって振り向いた。

そして遠くの看板を黙って指差し、ニタァ~~ッと笑った。

そこには「エル・フラメンコ」という店名のレストランの看板が掛かっていた。

「エル」は「肯定」である。

「エル」は「最上級」である。

そしてエルは「愛のかたまり」なのであった。