変な刺激さえ与えなければ、いつものエルなのだが。
その「刺激」が何なんだかわからないので途方に暮れている。
とにかく、突然鳴き出すのだ。
何かを激しく要求するように、目をしっかり見つめてこっちに体を乗り出して。
傍に体を寄せていれば、静かにはなる。
どうやらエルは、一緒に布団に入ることを望んでいるようだが、それで解決する訳ではない。
今度は布団の中で毛が抜けるほど体を舐めるのだ。
すでに右腕は、真っ赤にズルむけた。
足にもその地域を広げてきているが、もちろん傍にいられれば私の手を舐めさせるようにはしている。
しかし、100%エルの傍にいて舐めさせないようにするのは、難しい。
また舐め始めるんじゃないかと気を揉んで、こっちもかなり消耗した。
やはり病院だ。
できればオシッコを取って行きたかったのでギリギリまで待ったが、結局取れなかったので、土曜日の、駅前の病院での検査結果を持って行くことにした。
そう、今回行くのは西川口の神様のところだ。
駅前がヤブだという意味ではないが、まぁ色々あるのだ。
なんと1時間半も待った。
丁寧に診察して話を聞いてくれるので、こうなるのだろう。
待っている間に、看護婦さんがエルを見に来てくれた。
「エルちゃんですよね~。」と言ってキャリーバッグを覗き込み、顔を出したエルが彼女の指先の匂いをクンクンと嗅ぐ。
入院していたあの半月、この人はきっとエルをかわいがってくれていたのだろう。
駅前の病院でも同じ事があったが、こんな時、私はとても嬉しい気持ちになる。
「これはね、膀胱炎の所見じゃないよ。」
GOD先生は尿検査の結果を見て、まず言った。
「膀胱炎なら、赤血球や白血球が陰性にはならない。」
ええっ!?そうなの??
「・・・駅前の先生も、ストルバイトとは言ったけど『膀胱炎』とは言ってないよ。」とダンナ。
そうだったっけ??早とちりした??
なので、膀胱炎と、このエルの不安行動は繋がらない。
先生は、「精神的なものじゃないかな。」と、向精神薬を出すと言った。
小さいうちに辛い治療を受けた事がトラウマになり、それが何かのきっかけで出てきてしまう事は考えられる事だと。
ただ、きっかけがわからない。
どんな時に鳴き出すかをよく見ておくように、との事だ。
もちろん何か病気が隠れている可能性もあるが、食欲も元気もある。
人が傍にいると大人しくなるのなら、まず精神的なものを先に疑うとのことだ。
過剰グルーミングは、止めさせようとすると、それがまたストレスになるから、薬が合えば回数が減るはずだから、これも良く見ておくように、とのこと。
1週間ぐらいで効果がみられないなら、薬を変える。
効果があったなら、薬の切れる2週間後にまた来る。
先生は、体を舐めさせないようにするプラスチックの筒状の首輪・エリザベスカラーをつけたり、洋服を着せたりという事をさせなかった。
熱っぽいと伝えると一度は体温計を持ったが、「やっぱり、できるだけイヤがる事はやめましょう。食欲と元気があれば大丈夫でしょう。」とそれもやめた。
「消極的で申し訳ないんだけど、もうできるだけイヤな思いをさせたくないんですよ。でもやると決めた時にはとことんやりますから。」
そう、これまでもそうだったが、先生はエル中心に治療をするのだ。
避妊手術を勧めなかったのもその典型だが、私は先生を信頼している。
何かあったらその都度全力で対処してくれる事を、私は知っているのだ。
とは言え、猫に向精神薬とは、正直ぶったまげた。
エルにとっていい環境を作ってあげられていなかったのかと、悲しい気持ちになった。
ラにもミにも申し訳ないぐらいに、エル中心にやってきたのに。
こんなに大事に大事にしてたのに(泣)