昼に突然、娘ぶー子がやって来たのだ。
ぶー子はうちから歩いて2分ほどの、ごく近い所に住んでいる。こうして突然来るのは珍しいことではない。しかしこれはぶー子にとっても「突然」だったようだ。昼休みに戻ったら、パートナーに締め出されて家に入れなかったらしい。タバコも吸えん、着替えもできん、歯も磨けん、と激おこであった。どうもパートナーは、習慣でチェーンをかけてしまうらしい。
タバコも着替えも歯磨きもいいが、昼ご飯困るでしょう。どうしてそっちが困ってないのか不思議だったが、これは私が何か食べさせないといけない事態のようだ。
時間は12時半。今まさに私も昼ご飯を食べようとしていたところだ。しかし例によって食べるものがなく、ミニサイズのカップ麺にお湯を入れたところであった。
「・・・なにもないんだけど、出前一丁なら・・・・・・。」
出前一丁。
私の中の不動のキングオブラーメンはサッポロ一番なのだが、ほんとうにたまたま気まぐれにかったこれしかなかった。違うんだよ、これほんと、たまたま、と言い訳したくなったが、ぶー子は気にもとめず、「いい、いい、それでね、」と話をつづけた。
職場の男性の動きがどうもおかしいと思いはしたが、しばらくすると別の部署の人が駆け込んできて、彼のアゴが外れたから早退させた、とのこと。
どうやったらこの状況でアゴが外れる?
てかアゴが外れた?
ぶー子は死ぬほど笑った。私もそれを聞きながら死ぬほど笑った。
ところが職場では誰一人として笑わなかったそうである。それがまたツボで、ますますぶー子は笑った。中には「ひとりで病院に行け!」とブリブリ怒ってた人もいたらしく、それがまた一層ぶー子を笑わせた。私もそれを聞いてますます笑った。
夜になってから私はダンナに笑いながらその話をしたが、ダンナは全然笑わなかった。
私達親子は何かズレてるんだろうか?
アゴが外れるなどマンガの世界のようなもので、私には都市伝説的なものであった。
そしてそれを想像する。
そりゃ本人は辛かろうが、マスクのその中がどうなっていたかと想像すると、笑っちゃいけないだけに厳しいものがある。
病院か。
深刻ではあるが、その先は想像しないようにする。これ以上笑うと、いい加減バチがあたりそうである。