人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子56歳。

針の筵に座る。

電車に乗る時、私は迷わず空席を探す。スマホの英語学習アプリ(と言う名のほぼゲーム)をやるために、両手を使いたいのだ。つり革だと片手が塞がってしまう。

空席を祈りつつ、電車の到着を待つ。英語アプリを始めて3ヶ月ほどになるが、クラスが上がって来たからか、ちょっと時間を開けるとすぐに順位が下がってしまうのである。ランキングの下位5名は、下のクラスに降格されるのだ。なかなか熾烈な順位争いになっている。

 

下車する人が多かったので、空席はそこそこあった。3つ並んで空いていた席を狙ったが、同じ場所を若いカップルも狙っていたようで、4人並んで「あっ」と一瞬みんな固まってしまった。

一瞬だ。

ダンナが引いたので、結局カップルと私が座ることになった。

別にこのカップルが強引だった訳でもないが、こういうときチッ・・・、と思ってしまう。遠慮のないやつらめ。

しかしそれを言ったら自分も同じだ。そしてここで私たち二人が座ってしまったら、何となく居心地が悪かっただろう。

まぁまだ先は長いのだ。そのうちどこか空くはずだ。そして実際、すぐにカップルと逆隣りが空いたのだった。結果オーライ。

 

その時座っていた場所は、ダンナがドアに近い一番端、私がその隣だ。そしてカップルが続く。

私はイヤホンをして、アプリに没頭していた。なので気づくのが遅れてしまったが、ドア付近にいた若い女の子がコケた。・・・と思ったのだ。ちゃんとつり革に捕まってなかったのかな?

やや間があって、そばに立っていた人が手を貸した。女の子は立つ。

そしてまた私はアプリに意識を戻すのだが、しばらくすると隣に座っていたカップルの男性が席を立ち、さっきの女の子を連れてきて座らせたのだ。

イヤホンをしているので声は聞こえないが、男性は小さく屈んで女の子に声を掛けている。

どうやら女の子はコケたのではなく、「倒れた」らしい。女の子は軽く受け答えをしてから、いかにも具合悪そうに俯いていた。

 

し・・・・・・・、しまった・・・・・。

彼女に一番近い席は、私達ふたりである。人が倒れたというのにスマホに夢中でオールスルーという。

今さらどうすることもできずアプリを続けていたが、針のムシロだ。いい歳してこのザマは、本当に恥ずかしい。

 

隣のカップル、グッジョブ。

今後もどんどん座ってください。

できればドア側を。