人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

関東大震災 / 吉村昭

本の在庫が尽きた。

また古本屋に行きたいが、その前に、処分を迷ったままずっと手元に残っている本がいくつかあった。

こうしてブログに残すことによって処分の決心がついたので、しばらく「処分待ち」だった昔に読んだ本を消化していこうと思う。

ノンフィクションを多く書いていた吉村昭は、一時期良く読んだ作家のひとりだ。

事実に忠実で、かつドラマティック。

今となってはもう古い作家になるのだろうが、そういった部分での違和感はなかった。

今回は関東大震災の話である。

もうすっかり内容は忘れていたが、かの有名な関東大震災の惨事である。ある程度想像はできていたつもりだったのに、それをはるかに超えた事実がそこには待っていた。

亡くなった人は20万人を超えるとのことだが、悲惨をきわめている。

住宅の構造上、圧死も多かったが、火災の規模がありえないのだ。

炎から逃れるように人々は大きな公園などに集まったが、本所の被服廠跡地がもっともひどく、突風と火災と押し寄せる人の波で恐ろしい光景が繰り広がられていたのである。

データによると、被服廠付近及び緑町その他に於く死者は4万4千とのこと。

そのうち性別不明の遺体は3万9千というのだから、その火災の凄まじさを感じる。

また吉原公園も、火から逃れようとした芸者が次々と水に飛び込んで490人の死者を出している。

奇跡的に助かったのはたった40人、そのほとんどが煙による炎症を目に負っていたとのこと。

このような想像を絶する事実が、現場にいた生き残りの言葉から、また綿密に調べた数字から明らかになっている。

そして恐ろしいのは地震の被害だけではなく、通信機関が壊滅した東京に飛び交う流言であった。

人々は流言に怯え、朝鮮人を虐殺した。

今でこそ、日本人は災害時も理性を保つ誇り高い人種などと言われているが、このような歴史は恥ずべき汚点である。

そして、その後の大量の遺体の処理、丸裸になってしまった被災者の救済、糞尿にまみれた東京の衛生管理など、かの大震災は単に揺れて大変だっただけではなかったのだ。

そこに、この地震の予知をした人物と、それを否定して対立した人物のとの戦いも絡む。

とても読み応えのある1冊であった。

ぽ子のオススメ度 ★★★★★

「関東大震災」 吉村昭

文春文庫 ¥400だった。かなり前。