私は左側から強い圧力と視線を感じ、かえって身動きができなくなっていた。山手線の座席、左から三番目に座ったまま。
しかし私は、そのようなプレッシャーには気づかないような涼しい顔をして、本を読む。
ここはどこだ?
車内のモニターを見ると、御徒町、という文字が見えた。
それはどこなのだ・・・。
私は高田馬場からその電車に乗ったのだが、空いていたので座って本を読んでいたのだ。
目的地までは結構あるので、安心して夢中になって読んでいた。
やがてどこかの駅でドドドとたくさんの人が降り、ドドドとさくさんの人が乗ってきた。
私の隣にはオバチャンがドカッと座り、ご主人と思われる人がその前に立った。
ん?これは譲るべきパターンか??
私が人に席を譲るかどうか判断するのは、見た目の年齢である。
微妙に若いと断られたりしてかえってバツが悪いので、申し訳ないが譲らない。
しかし今回はこの「微妙に若くて判断に迷う」パターンであった。
判断に迷ったのでできれば顔などを見て判断材料を増やしたかったのだが、本を読んでいる顔を上げて相手の顔を見て席を譲る、というのもどうなのか。
などと考えているうちにオバチャンの左隣に座っていた学生が立った。そこにはオバチャン一味のオバチャン2が座って、「若いんだからどかなくちゃ」というような事を大きな声で言った。冷や汗。
さっさと立てば良かったのだ。
しかし今やタイミングを逃し、どんどん席を立ちにくい状況に追い込まれていた。
やがて左隣のオバチャンの鋭い視線が、無遠慮に私に向けられた。
ど、どうしよう~~~EE:AEB64怒ってる!!
私の目はまだ小説の文字を追っていたが、視界の左側に、非常に攻撃的な視線をありありと感じることができた。
立て、立つんだ、ジョー。
しかし立てなかった。
この微妙に逃したタイミングのせいもあるが、実はこの「どけ」と言わんばかりの態度に少々腹が立ったからである。
顔は見ていないが、明らかなお年寄り、という年齢ではなく、もうすぐ年寄りになろう、なんならしてやろうか今すぐEE:AE4E5という頃合いだ。
向こうは私のずうずうしさに腹を立てただろうが、私も私でそのずうずうしさに腹を立てたのである。
親切は要求するものではない。ましてやそのような視線で。
私は本から目を離さなかった。
しばらくオバチャンは私を睨んでいたようだが、そのうちに諦めたようでオバチャン同士で喋りだした。ホッ。
やがて私の右隣が空いたので詰めてやったが、これでいくらか気持ちは楽になった。
神田。
神田??神田ってどこ??
私の行き先は上野であった。
神田は上野より前なのか後なのか?
馬場から結構あったと記憶していたからのんびりしていたが、神田ってどこよ。
車内のモニターが路線図に切り替わったので良く見てみると、もうとっくに上野は過ぎていた。
というか、御徒町の時点で過ぎていた。
というか、オバチャン御一行が乗ってきたのが上野ってことじゃないか。
私が気づいて降りていれば、誰も嫌な思いをしないで済んだのである。
親切は要求するものではない。
そして、
親切を迷ってはいけない。