人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

絶望しない絶望

困難に、弱い。

マイナス思考なのですぐに窮地に追い込まれ、簡単に絶望する。

絶望したって何も変わらないのだ、前進するのが打開への道なのだろうが、こうなるとしばらくフリーズしてしまう。

朝になっても何も変わりはしない。

もう今日は何もしないと決めた。

掃除や洗濯をしても何も変わりはしないのだ。

しかし今日は、冷蔵庫、厳密に言うと冷蔵庫についている冷凍庫の修理が来るのだ、何もしない訳にはいかない。

幸い昨日は通常通りに家事をしたので、そう散らかってはいなかった。

冷凍庫の部分だけ拭いて、ボーッとしていた。

我が家の冷凍庫は自動で製氷してくれるものだったが、数年前から急にダメになってしまったのだ。

一応氷はできるのだが、平らな板氷状態である。

そのままでは使えないから、アイスピックでガンガン叩いて割るが、冷凍庫の氷を一度に使い切ることはないので、やがてまたその上に平らに氷が張ることになる。

なので使う度にアイスピックで叩くことになるのだが、何度も繰り返しているときれいに割れずに粉々に砕けるようになってしまう。

仕方がないのでそれを手ですくってグラスに入れていたが、こんな不便も慣れるものである。

電話をかけて修理に来てもらう方が億劫になり、結局数年が経ってしまった。

それがなぜ急に修理を頼む気になったのかというと、家事から逃げるために気まぐれにネットで製氷機の故障について調べていたら、どうやらこれは欠陥品のようで、無償で直してくれそうだということが分かったからである。

もちろん、電話に出た窓口のお姉ちゃんは「見てみないと何とも言えません」としか言わない。

まぁそれもそうだろう、原因がこちらにある可能性もなきにしもあらずだ。

しかし、「修理代が高いのなら頼まないかもしれない、その場合出張費だけ払うのか」と聞くと、出張費が無料になる機種があるという。つまり、「欠陥品」の機種だ。

どうやら我が家の冷蔵庫はその機種に当てはまったので、来るだけ来てもらうことにした。

朝早く「午前中には伺います。」と電話があったが、その時に「修理は無償でできます」と言われたので安心した。

三菱のちょっと古い冷蔵庫をお使いの方、氷ができない場合は修理を頼む前にまずネットで調べることをお勧めする。

太陽が昇り、暖かくなってきた頃に、修理人は現れた。

年配のモッサリしたおじさんで、彼を見ると姉妹猫は慌てて隠れ、若い2匹は興味しんしんに後を追った。

あまりそばにまとわりついても邪魔かと思い連れ戻すのだが、ダイもエルも余程気になるようで、何度でも見に行ってしまう。

エルはカウンターに陣取って落ち着いたが、ダイがどうしてもそばに行きたがるので、仕方なく少し離れて抱いて見せることにした。

猫と、猫を抱いた飼い主に囲まれて作業をすることになるおじさん。

私はこういう時の会話が苦手なので、無言である。

やりにくいのか、おじさんは終始ひとりごとをつぶやいていた。

「あれ?」「えーと、そうそう」「・・・と、どこだっけ??」という感じだが、ひとりでつぶやかせるのも気の毒なので、私がそこに時々割り込む。

割り込むといっても割り込めるほどの内容ではない、単なる相槌である。

おじさん「あれ?」

私「はい??」

おじさん「えーと、そうそう」

私「はいはい」

おじさん「・・・とどこだっけ??」

私「どこでしょう??」

こんなに無駄な会話を見たことがない。

氷を作り出す部分の製氷皿が、割れていた。ネットで見たケースと同じである。

どうやらこの製氷皿が欠陥品だったようで、これを交換して終了だ。

あぁ、もうアイスピックで氷を割らなくて済むのである。嬉しい。

嬉しいが、修理人が帰るとまた絶望的な現実が戻ってきた。

しかしどんな絶望にも、期限があるのだ。

絶望とはエネルギーを使うものなのである、私はそんなにタフではないので、そう長い間絶望もしていられないのである。

製氷機が直ったり、酒でも飲んだりしていくうちに、また日常が戻ってくるだろう。

そういう意味では絶望していない。

期間限定の絶望である。