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18時50分、東村山駅。
スタジオまで徒歩5分程度。
大丈夫なのか、サンタイザベル・ぽ子。自分に問う。
どシラフでスタジオに向かっていたが、私はまだ迷っていた。
決め手はブルースであった。
迷っていた私は酒と歌にまつわる色々な事を思い返していたが、決定打となった思い出はシラフでカラオケを歌った時の事である。
もちろんその後散々飲んで酔っ払うのが慣わしだが、カラオケボックス到着直後はシラフである。
なので「ウォーミングアップ」と称してビートルズを歌うことが多い。天才バンドを準備運動に使い、程よく回ってきたところで徐々に本命に近づけていくのだ。
しかし一度、珍しい曲が入っていたのでシラフのままそれを歌ってしまった事がある。
それはレッド・ツェッペリンの「Since I've been loving You」という非常にブルージーな曲であり、外も明るく、元気があるうちに歌うべき曲ではなかった。
途中で笑けてしまい、私はブルースとシラフは共存できない事を知ったのであった。
そして、今回の練習曲には、新しくブルースが1曲、加えられていたのである。
ひとりぼっちだ、死んじまいたい、と繰り返すその曲を、果たして私はシラフで歌えるのか?
その時あのカラオケのツェッペリンがシンクロしたのである。
ヤバい、あんな事態は避けなくてはならない。
私は駅に併設されたスーパーに駆け込んだ。
飲み物が持ち込めないなら、部屋を出たところで飲めば問題ないだろう。
何度にも分けて飲むなら缶はダメだ。確かウィスキーの水割りかウーロンハイのペットボトルがあったはずだ。
ハンカチで包んで飲めば、スポドリでも飲んでるボーカリストに見えはしないか。
しかしスーパーにそれはなかった。
コンビニまで走る。
ないないないEE:AEAC6
さっきまでは迷っていた、つまり50%は「飲まなくてもいい」と思っていたのに、もうなくてはならない存在にまでそれは膨らんでいた。
缶はダメだ、じゃあどうする?
瓶だ。
私は398円の白ワインのフルボトルを買い、レジ袋に入れたままそれをラッパ飲みしつつスタジオに向かった。
そしてそれを、2時間の練習の間にすっかり飲みきってしまった。
結論。
アル中と呼ばれてもいい、私には酒が必要だ。
酔いが回るまでの序盤は、全然声が出なかった。
もちろん酔わなきゃ歌えないのなら、それが仮にどんなに上手かろうと歌えたことにはならないだろう。
そんなのはニセモノで、酔っ払いの戯言レベルの実力だ。
でももう、それでもいい。
結果が「歌える」「歌えない」のどちらかなら、その経過がどうであれ私は「歌える」方を選びたいのだ。
「あの人、すっごく歌は下手だけど、飲まないで歌えるんだから素晴らしい」なんていう褒め言葉はどうだ??
いらぬ、「ぽ子はいつも酔っ払って、酒がなくちゃな何もできない」、結構、しかしそのうえ下手ではただの酔っ払いになってしまうので、これからもいっぱい飲んでいっぱい練習していこうと思う。
飲みながらで他のメンバーには非常に心苦しいが、病気だと思って黙認していただければ幸いだ。