人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

アホの恩恵

ノックの音で目が覚めた。

昨夜は午前出勤に備えて10時には布団に入っていたのだが、寝入りばなであった。

こうならないために、いちいち「先に寝ます」と宣言しているのだが。

返事をしないで目だけドアの方にやると、そっと娘ぶー子が大五郎を抱いて入ってきた。

「おかーさん、ダイちゃんの目の色が、かたっぽだけ違う・・・。」

あ、そ。

知ってる。

ダイは生後半年を過ぎ、もう体は4匹の中で一番大きくなってしまった。

単に大きいだけではなく、ガッチリとしている。

手足などのパーツパーツもいちいちでかく、「でかい」と時々わざわざ言いたくなるほどだ。

そのくせ、目が小さい。

黒猫なので目ぐらいしか主張するものがないのに、でかい図体して目は小さいのだ。

その上少々面長なので、アホヅラだ。

しかしそのアホヅラゆえに、数々のイタズラが笑って済まされてきたのである。

人間はそうはいかないところに、不公平を感じる。

で、ダイの目の色が濁っていた事には気づいていた。

恐らく結膜炎だ。二度目である。

「またなったら、この目薬そのまま使えますから」と前回言われていたのだ。

ただ、間違いはないかもう一度病院に確認したかったから、昨日は何もできなかったのである。

しかしそんなことは知らないぶー子は、心配してダイをわざわざ連れて来たのだ。

でかいダイを丸く抱き、静かに立っているぶー子。

でかいダイはでかいくせに、大人しく丸く抱かれていた、アホヅラで。

コトは翌日まで保留だし、目薬ですぐ治ることも分かっている。

ぶー子の深刻さの中のダイのアホさ加減がおかしくて、私は心の中で笑ってしまった。

顔で笑えなかったのは、眠かったからである。

「それは薬があって今冷蔵庫に入ってるけど使えるかどうか明日確認してからになるからお父さんは今寝てるけどF1始まったら起きるから晩ご飯適当に食べておやすみ。」

眠かったので一気に言い切った。

しかし今朝になって知ったが、適当に食べるものなどなく、マドレーヌとチキンフライ(小)の残りでしのいだそうな。

その調子で今朝も適当にしのいでもらったはずだが、一体みんな、何を食べて行ったのだろうか。

ちなみに私の朝ご飯は、野菜ジュースである。