上司アンガの結婚式であった。
冠婚葬祭などのフォーマルな席どころか、朝礼レベルの緊張で「笑ってはいけないプレッシャー」がかかるぽ子である。
不謹慎だと怒られそうだが、ぽ子的にこの結婚式の課題は、①酒に飲まれずに帰る、②笑わない、であった。
しかし、危険な場面は事前にいくつも予想された。
だいたい、上司アンガが派手なスーツを着るのである。
弱冠23歳にして新郎になる彼は、普段はヘロ~ッとしたTシャツを着てヘロ~~ッとしているのだ。
それを急に改まってスーツを着て結婚とは。
感激屋の彼はきっと泣くだろうし、笑い屋の私は彼が泣けば泣くほど笑ってしまいそうである。
一番心配だったのは、式である。
牧師が外国人だったらどうしよう・・・。
カタコトでも笑えるし、変に流暢な日本語ならさらに笑えてしまう。
これはキツい。
日本人が出てきても肩透かしを食って笑いそうだが、その場合、堪えるのはその1回で済む。
アンガは日本人なのだ。日本人を出してくれ。
ところで今調べて分かったのだが、「牧師」と「神父」の違いは、プロテスタントとカトリックの違いだそうな。
という訳で、ここに来たのは牧師か神父かはわからない。
もしかしたら、式場が雇ったただのオッサンかもしれない。
ロビーで式が始まるのを待っていたら、いやに足の長くなったアンガと白人の牧師がチャペルに入っていった。
外国人、確定である。
真っ白いポンチョのような衣装に、赤いマフラーのようなものを肩から提げている。
あぁヤバい・・・、絵に描いたような「牧師」である・・・。
席に着き、新郎新婦が現れると、「Welcome to our wedding ceremony!」と、ディズニーのパレードのオープニングのようなセリフでそれは始まった。
カタコトの日本語だろうと準備していたので、ここでまず一度ブブッとなった。
彼は訳の分からん英語でダダダ~ッと何かをまくし立てていたが、間髪入れずに「ゴキリツクダサイ」と言ったので次の波が来た。
前を見ると、課長やネトゲ仲間の肩も揺れている。
それがまた、私の笑いを誘発する。
苦しい。
涙がこぼれた。
満面の笑みで新郎新婦を招き入れる牧師。
そのミュージカルがかったハピネスにまたフフッEE:AE4E6となり、なぜか身長まで伸びてイケメン風に変身しているアンガにフフフッEE:AEB64となる。
牧師のマフラーの先に白い鳩が刺繍してあり、「なんであんな所に鳩が・・・」と思うと笑え、オルガンの前にフルート吹いてる人がいて笑え。
最後に3人のコーラス隊が「アーメン、アーメン、アーーーメンーー」と歌い、「アーメンだけかよ」と笑って式は終わった。
ところで、隣に座っていたさとちゃんは「ヤバい、ヤバい」と目を潤ませていたが、笑っていたのか泣いていたのかは分からない。
いずれにしろ、多くの人を泣かせた式であった事には間違いない。