娘ぶー子の塾通いが始まっている。
3年前の高校受験以来である。
ひとりで果てしない勉強を強いられ、恐らく閉塞感を感じていただろうぶー子は、結構楽しんでいるようだ。
科目は2つ。
「英語」と「読解力強化」である。
読解力強化とは?
ぶー子が受けるAO入試は、面接の他、英語の質疑応答と、読解力を測るためにビデオを観てから設問に答えるテストがある。
そのための練習だ。
オープンキャンパスで模擬テストを受けたが、過去のデータを見ても、小難しいトピックばかりであった。
ビデオを見ている間は、自由にメモを取ることが許されている。
問題はビデオを観終わってから配られるので、このメモがとても重要な役目をするのだ。
塾でも同じ事を繰り返し、メモを上手く取る練習をしている。
「できるだけぶー子さんの興味のないような、難しくつまらないようなものをやっていく予定です。」
塾の室長は言っていた。
室長曰く、面白いと感じる事柄は少ない努力でも吸収されるが、いかにこの未知の題材の重要な部分を効率よく書き出すかが大切であるという。
すでに塾での自習時間に数本観てきたらしいが、その最中と思われる時間に「・・・眠い・・・。」というメールが来ていた。
何を見たのだろう?
「カール・ルイスって知ってる?」
私がビデオの事に触れると、ぶー子は聞いてきた。
「ウン、確か陸上の選手だよね。カール・ルイスの話だったの?」
「うん、ていうか、カール・ルイスの靴が出来るまで・・・。」
そのタイトル、「カール・ルイスの魔法の靴」。
か、カール・ルイスの靴・・・。
恐るべしNHK。
しかしもっと恐ろしいのは、結構面白かったらしいという事である。
ところで今日は先程帰って来たが、今回は「プロジェクトX」の「泣き虫先生とつっぱり生徒」というもので、これが泣けたそうだ。
困りますよ、そんなの見せてもらっちゃ。
もっとつまんない、歌舞伎役者のぞうりの鼻緒ぐらいのをやってくれなきゃである。
ところであまりに心を打たれたので、このビデオを選んだ先生に、「先生、何のビデオだったかわかってますか?」と言いに行ったら、
「泣き虫生徒とつっぱり先生」と答えたらしい。
もちろん、「それじゃイジメだよ!!」と突っ込んだらしいが。
どんな事でも、楽しく学べるということは素晴らしい事である。
学校では残念ながら、それが叶わない。
仕方ない、もう子供ではないのだ。義務教育は終わっている。
学校は勉強したい者が積極的に学ぶために行く場所であり、その内容が生徒の気を引くような楽しいものである必要性はないのである。
その点、塾は商売だ。
成果が上がらなければ、簡単に捨てられてしまう。
そのためには生徒の成績を上げなくてはならず、さらにそのためにはやる気を出してもらわないといけない訳だ。
頑張れ、塾よ。
頑張れ、ぶー子よ。
AO入試は迫っている。