金曜日だ。
月曜は月曜だから何もしなかった。
火曜は健診だったから何もしなかった。
しかし水曜と木曜は、比較的精力的に動いたつもりだ。
おかげでトイレと風呂がきれいになった。
ところが今日になってみると、昨日とおとといのお陰で、「今すぐ何とかしなくちゃならないほど」急を要する家事が見当たらなくなってしまったのだ。
もちろん部屋は散らかっているし、汚れている場所もたくさんある。
しかし、昨日おとといあたりの風呂やトイレに比べれば、どうってことないレベルなのだ。
どうもやる気がしない。
まぁまずは朝のゲームだ、家事についてはその後だ。
私は、朝、娘ぶー子が残したご飯とダンナが残した鮭の皮をテーブルに運んで、携帯のデータファイルを開いた。
ゲームである。
謎解きのゲームなのだが、今私は、壁一面に何かのマークが描かれた部屋にいる。
そこには機械がある。
その機械で12のマークを描けるようになっているのだが、それだけである。
どうしろと?
謎解きとはそんなものなのだろうが、こうなるともう頭をひねるだけで、プレステを立ち上げる必要がない。
私は写メった30のマークを、朝ご飯を食べながら見ていた。
10分ほどで食べ終わる。
まだゲームはやってていい時間内である。
場所をソファに移動して、コーヒーを飲みながら写メを眺めていた。
すぐ前のテーブルにはラが、ソファの隣の席にはミが寝ていた。
猫とは、眠いオーラを発する動物である。
瞬く間に私も眠くなる。
そこへエルがソファに飛び乗ってきて、隣でクルンと丸くなり、伸ばした手を私の体に乗せた。
・・・わかりました。
寝ます。
携帯を持ったまま、あっという間に夢を見ていた。
ムニュ、という感覚で目が覚めた。
テーブルで寝ていたラが、お腹に乗ってきたのだ。
よし、わかった。
ますます寝てあげます。
そして夢の続きを手繰り寄せようとしたが、イラッとする不快感で現実に引き戻された。
ラが私の腕を舐めているのである。
猫の舌はヤスリのようにザラザラしているので、ラの舐める私の腕はザー、ザー、と薄ら痛む。
不快である。
「起きろ」と言われてもなかなか目は覚めないが、不快感と言うものは人を目覚めさせるものだ。
ムナクソ悪い目覚めだったが、お腹に乗った途端にどかされたラも気の毒であった。
文句は猫の舌の構造を決めたヤツに言ってくれ。
しかし起きたと言ってもやる気が出た訳ではない。
まず私はやった事は、ダスキンのハンディモップでプレステを拭いた事だ。
いかにもやる気なさげだろう。
モップを持ってしばらく仕事をしてるようなそぶりをしたが、時間はまだある。
くそー、もっと徹底的に汚ければもうちょっとやる気にでもなるのに、中途半端に片付いている。
こんな時のために、手帳にはさんだ広告の裏には私が着手するべき家事がイヤって程書き出してあるのだが、今見ないでどうするのだ。
私は手帳に触れることなく、2階の音楽室に上がった。
旅行に持って行ったプレステを元に戻すと、ピアノの椅子に座ってしまう。
なんて贅沢な時間の使い方。
いちいち座ったり読んだりしながらの家事である。
このかったるさは、仕事に行っても続いていた。
金曜日、酒が飲めるぞーの日だ。
もうすぐ酒だと思うと、なお酒までの時間が長く感じる。
しかしやっと、いよいよ「その時」が近づいてきた。
金曜日である。
酒が飲めるぞーの日だ。