そりゃ本音を言えば行きたいです、ぽ子。
「社内旅行とか行きたいですよねぇ~。」
「いいねぇ~。」
「どこにしようか?」
「温泉。」
「おもしろそー!!」
嘘なんかじゃなかった。
「え?じゃぽ子さん、社内旅行あったら行きますか?」
「そりゃあ都合が合えばもちろん。」
実は都合なら、何とかつけようと思えばできないことはない。
実は問題は違うところにあるのだ。
ウチのダンナは忠犬ハチ公の如き真面目で忠実な人間だ。
バカにしている訳ではない。知ってる人にはわかると思うが、とにかくそういう人なのだ。
だから家族が嫌がることはしないし、やると言った事はちゃんとやる。
以前、「タバコを止めたら朝ご飯を作ってあげる。」と彼に言った事がある。もちろんタバコを止めるのは彼で、私は関係ない。一方的な条件である。しかも言い出したのは私だ。
ダンナはタバコを止めた。スパッと止めた。
私はと言えば、結婚以来恐らく一度も作ったことのない朝ご飯を作るという約束は、ついに守らなかった。
細かいことは今回は書かないが、こう言った夫婦生活はいつか破綻するので要注意です。
とにかく、ダンナは朝になるときちんと起きて、現在では朝ご飯を食べ、トイレに入り、髪を整え、同じシャツを続けて着るようなことはなく、同じハンカチを続けて持って行くようなことはなく、遅刻もせず会社に向かう。
私はと言えば、まぁ連日記事にしている通りで。
つまり、こんな状態ではなかなか言い出せないというか、具体的な話に進めないというか、先に進めないというか、諦めたというか。
大体ダンナは飲んで帰ってきたりしないし、社員旅行だって、なかったからだが一度しか記憶にない。
忘年会など公式な行事には出るが、その度私は散々「ズルイ、ズルイ」とごねてイヤミを言ってきた。
もちろん私も極力外に飲みに出ないようにしていたが、同窓会をきっかけにちょこちょこ出るようになって来たのだ。
つまり、圧倒的に不公平なのだ。
まぁいい。
家庭が一番大事なのだから、やはり行くのは止めておこう。
先日酔って大迷惑かけたばかりだし。
仕事に行くとパート仲間が集まっていて、旅行どうするかと言い合っていた。
中には行きたがっている人もいたが、多くは「泊りは難しい」だとか、「子供が小さいから」だとかで行かないと言う。
そうなると「じゃ、私も行かない」という人が多数出て、結果、ほとんどの人が行かない事になってしまった。
「ぽ子さんもアレですか、行く人が少ないから行かないんですか?」
旅行をとても楽しみにしていたアンガが聞いてきた。
私はダンナとの関係を説明するのが面倒だったので、「うん、やっぱね。」と適当に返した。
しばらくすると、「じゃ、何人いたらいいですか?」と聞いてきたので困ってしまった。
何人??何人って・・・。
「何人と言うか、『誰』の方が正しいかもしれない。」と言うと、誰がいいのかだとか、嫌なのは誰なのだだとか、とにかくこの日からアンガは1人でも多く旅行に来させようと頑張り出したのだ。
次の日会社に行くと、「ぽ子さん、旅行は仙台になりました。」と言った。
ええっ!?蓼科じゃなかったの??仙台、行きたい~~!!
「旅館のHP見たんですけど、すごいですよ。1人で泊ると2万とか・・・。」
へぇ~、そんなすごいトコなのか。
でもダンナを置いてねぇ・・・。
「酒飲むところが2ヶ所もあって、すっごいオシャレなんですよ。」
!! 酒!?
う~ん、う~ん。苦しくなってきたぞ。
「温泉もすごいし・・・。」
でも温泉って・・・。会社の人と入るのはねぇ・・・。
「大丈夫です、ちゃんと部屋にも風呂がありますから。」
アンガよ、私は行かれないと言ったはずだ。
もうこれ以上揺さぶらないでくれ。
しかし彼は隣で仕事をしながら延々と旅館について語るのであった。
次の日出勤して「おはようございます。」と挨拶をすると、アンガはまず「ぽ子さん、旅館にラーメン出すところがありますよ。」と言った。
もうここまでくると爆笑だ。
一体どこまで学習して来るのだ、旅館について。
「行きましょう」とか「ダメなんですか?」と言う類のことは一切言わない。
ただ淡々と旅館について話すだけなのだ。
相変わらず人数は増えないようで、アンガも淋しそうだ。
4時を回りパートさんがあらかた帰ってしまうと、「ぽ子さん。」と呼ばれた。
行ってみると彼は、パソコンで旅館のHPを開いていた。
まだ終わってなかったか(笑) おかしくて力が抜けた。
マインドコントロールに近くなってきた気がする。
旅館、すごいんですよ・・・。
会社持ちで仙台ですよ・・・。
楽しそうですよ・・・。
私もちょっと無理してダンナに詰め寄ってみるかという気持ちになってきた。
回答は週明けの月曜日だ。
ダンナに言うなら1日でも遅いほうがいいだろう。
1日でもこの間の泥酔日から離れた方がいい。
そしてこの週末を、良い子で過ごさないとだ。
自信はない。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・
関係ない話だが、ラジオで大塚愛の「さくらんぼ」がかかっていたら、
課長がニコニコと「さくらんぼ!って感じですね。」とだけ言った。
意味がわからない(笑)