「適当にモッて。」
同窓会だったのだ。
ぽ子38歳は、ぐうたら主婦なのだ。
普通に行ったらきっと誰も「ぽ子」である事に気付いてくれないか、
「ああなりたくはない。」と思われるだろう。
ところで「モる」とは。
これは高校生の娘が使っている言葉だ。
つまり「カッコつける」が、一番近い言葉だろうか?
キメて撮った写メを「モり写メ」、カッコつけた写メなどあると「モッてんじゃん~。」となる。
そこで。
私は同窓会の前に娘に「モッてくれ。」と頼んだのだ。
先程言ったように、普段のままいくとぽ子の株が下がる。
ここ1発なのだから、1パターンでいいのだ。
服と靴、髪だ。
ぶー子は喜んでまずヘアアイロンの電源を入れた。
3つあるうちのスペシャルというシロモノのだ。
まだ頭が濡れてるんだけど、と言うと
いいからこっちゃ来いや、と言うので任せる。
まだスペシャルは出さずにまずドライヤーで髪を乾かす。
それなら私でもできるので・・・。「いーから!!」
良くないです、髪が必要以上に抜けないようにしたいのですが・・・。
「はぁ?大丈夫、大丈夫!!」
大丈夫じゃねぇよ~。「プチ」という感触がある度に私は冷や汗がでる。
軽く乾かすとアイロンをあてて髪をストレートに伸ばす。下の方だけだ。
・・・耳とか挟まないでよね・・・。
ガシガシ簡単にやってるが、大丈夫か?
「大丈夫、大丈夫、私もチコに挟まれたことあるしさ♪」
・・・それは大丈夫とは言えない。
トップをワックスで膨らませる。
「これ、どれだけもつの?」
「濡れなきゃ大丈夫だよ。」
これまでもそうだったが、ぶー子のやることは訪問販売と同じで
大げさに良さげなことを言い、効果がないか続かないのだ。
「・・・これ、ヘタッたらどうするのよ。」
「だー、あとでモり方、教えるから!!」
彼女は苛立ちながらそう言った。
ところで結果論だが、私はベロ酔いしたので聞いた意味はなかった。
着る物についても、ぶー子に頼るしかなかった。
このところ私は、数年前に安売りで買った服か家族の残り物で過ごしていた。
冬ともなるとコーディネートが面倒で、ジーパンとトレーナーを繰り返し着ていた。
さすがにそのまま同窓会とは、ぽ子の最後の見栄が許さない。
ぽ子などに誰も期待などしてなかろうが、今このぽ子の生活でだれもぽ子に期待などしていないのだ。
あっ!!とは言わせられなくても「・・・やっぱりぽ子だった。」と誰にも相手にされないのはゴメンだ。
だからと言って高校生の娘に助けてもらうのも情けないのだが、どこかにそれが書いてある訳じゃないからヨシとしよう。
風呂に入っている間に適当に決めてそこに置いておいて、と言っておいたのだが
置いてあったものはムチャクチャだ。
2パターン用意した、と言ったが、どちらもぶー子が着た事のないパターンじゃないか。お前、着れるのか?
「いーから着てみ。」と彼女は笑っていたが、私にはわかる。着てみた結果が。
しかし彼女がわからないので、彼女のために着てやった。絶句していた。
ぶー子はこのように喜んで人をイジるが、どうもそれで実験しているフシがある。
3パターン目は、すごくかわいいキャミソールであった。
キャミソールという言葉に馴染みのない方のために説明すると、
それは下着のような、肩の部分はヒモだけの非常に、その、アレである。
で、「この上にセーター着て。」と言う。
え??このかわいいキャミソールの上にセーター着ちゃうの?
そしたらこのフリルもリボンも見えなくなっちゃうじゃん!!
ぽ子はゴネた。フリルとリボンは出したい!!
するとぶー子はまた違うキャミソールを持って来て「これに着替えて。」と言う。
フリルもリボンもない、普通のキャミソールだ。
「こんなのイヤだよ。」と言うと、「アンタがゴネるから、その夢を捨てるためにコレを持ってきた!!これ着て!!その上にセーター!!」
ぶー子はどうしてもセーターを着せたいらしい。
私はフリルとリボンだ。
親という立場にモノ言わせて、勝った。
その結果、帰るまでニットのボアつきのコートを脱ぐことができない状態になった。
確かに、キャミソールのフリルを見せるためには、上に他に着ることができないということなのだった。
中途半端で申し訳ないのですが、もうヘロヘロに酔った上、
今日中の更新をとなると間に合わないので続きは明日・・・デス。