人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

選択

つまり、もう今は酸素室に入れる以外にできる事がないんだと。

でもこのまま育っていけば体はもっと酸素を必要としてくるだろうし、

この状態では恐らく満足に酸素を取り入れることはできないだろうとも言った。

ただこんなペチャ胸は先生も初めてで、良くも悪くもどうなるかわからない、もしかしたら好転することもないとは限らない、とも言った。

私は手術を選ぶことにした。危険は承知だ。

このままではミルクと排泄の数分以外、一生(恐らく短い一生になるだろう)酸素室から出れないだろう。

目だって見えてないと言うのだ。(後で書くがどうも少し見えてるような気もするのですが。)

これでは何のための人生なんだ?

手術をお願いする病院は、漏斗胸を完治させた方が情報を下さった。

もし子猫の漏斗胸で検索した人がいればご存知だろう、トゥポルちゃんのママだ。

この病院に勤務していた医師が意外にも近所に開業していたので、今日レントゲンを持って早速行ってみた。

行ってみて驚いた。

もう私が来ることは分かっていて、手術を手がけてくれる先生にも連絡済みだというのだ。

トゥポルちゃんのママが根回ししておいてくれたのだ。

そして病院側も「手術をしましょう。」と言ってくれているとの事。

あまりの事で頭がクラクラしてぶっ倒れそうになった。

感謝という言葉では足りない。

「ありがとう」の他に何が言えるのだろう?

しかし手術できるかどうかは見てみないとわからないそうだ。

私はネットでトゥポルちゃんとミラ君という2例を知ったが、

どちらも重症ではあったが、エルよりは体重も月齢も全然大きい。

それでも例えばミラ君は、「麻酔から覚める確率は半分以下だと思って下さい。」と言われたそうだ。

小さい程リスクは高い。

そしてエルはどうやら肺の1つが機能していないかもしれないらしい。

恐らく大変危険な手術になるだろう。

それでもどちらかを選ばなくてはならないのだ。

手術が失敗すればそこで終わる。

酸素室で少々長く生きても、ミルクを飲みに酸素室から出るだけの生活。

私には手術の方がまだ希望があるように思えた。

どんなにかわいくても酸素室越しで声を掛けるしかできないのだ。

これでエルは幸せなのだろうか?

夜の面会に行くと、午前に行った病院の先生が電話をしておいてくれたようで

先生はもう全て承知していた。

「転院するならデータをお渡しします。」と言ってくれた。

面会。

エルは元気だった。

ミャーミャーと鳴いて立ち上がり、あどけない顔でこちらを見る。

指を差し出して左右に振ると、ゆっくりだが目で追っているように見える。

もしかしたら少しは見えるのかもしれない。

そしてその指にじゃれるようなしぐさを見せた。

ほんの少しずつだけど、確実に成長している。

この中に入っていれさえすれば、元気なのだ。

もしかすると私の選択が、この子を殺してしまうのかもしれない。

酸素室のケースの中で機嫌よく転げ周り、愛らしい顔を見せる。

泣けてきた。

エルを失いたくない。

ケースを開けると凄い勢いで飛び出してきた。

少しならいいと言われているのでいつも少し抱くのだが、

フッフッと言うので見てみると、凄く荒い息をしていた。

こりゃダメだ、早く戻さないと。

ケースに戻してもしばらくはじっとして苦しそうだった。

ものの1分かそこらでこれだ。

こんなんではミルクも満足に飲めていないだろう。体重が増えない訳だ。

ダメだ・・・。

こんな状態でいつまで生きていけるのか。

私が取るべき道はもう決まっているのだろう。

ただ、それでも少しでも長くエルといたい気持が迷わせている。