人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子56歳。

ゴールのない練習

今週のお題「練習していること」

 

相変らず細々と練習しているピアノだが、もう上手くなりたいなどと思わなくなっていることに気が付いたのだ。

そもそもこの程度の練習量で上手くなりようもないが、それでも「ある程度完成させたい」という希望は持って練習していたはずであった。

指の訓練のためにハノンとソナチネなんかを弾いていた頃もあった。

しかしもう、時間が惜しい。下積みなんてやったところでそれが映えるのはもっと先だ。

たかだか趣味ではないか。楽しくてなんぼじゃ。衰えと時間の勝負なのである。もう好きな曲だけ弾いていこう。

こうして今では、課題曲を一曲決めて、気が済むまで弾いたら次にいくことにした。

ポップスもあった。クラシックもあった。ゲーム音楽もあった。

 

今は、ベートーベンのテンペストの2楽章を弾いている。私には難易度は高い。

もともとスローテンポの曲だが、それをもっともっとゆっくり弾くところからのスタートだ。笑っちゃうぐらいゆっくりだ。実際笑ったような覚えがある。

それでも繰り返せば、ほんの少しずつでも変化が見えて来るのである。そこが面白いところだ。私はそれをじっくりと味わう。

楽譜と、音と、「こう弾きたい」という私の願い。そこにあるのはそれだけだ。

ご飯の支度も、掃除のことも、来週動物病院に行かなきゃならないことも、猫のことも、猫が歳をとってしまったことも、猫を失いたくないということも、自分の不甲斐なさも、生まれて来た意味も、死んでいくことも、何もかもが消え去り、私はただ一心に指を動かしている。

幸せだ。

何事にも煩わされず、このいっとき、この瞬間に没頭する。そこには自分すらいない。あるのは音への希望だけだ。

 

だからもう、上手くなりたい、弾けるようになりたいなどとは思わなくなった。

今はただ弾くことを楽しんでいる。

 

上手くならない訳である。