この本を手に取って、私は戸惑っていた。「なんでバッタの本など?」。
表紙はバッタのコスプレをしている著者。ふざけているのか。
ふざけてなんか、いない。大真面目だ。著者・前野氏は、いっそ食べられてしまいたい程に、バッタを愛していた。
そのバッタへの情熱が綴られている1冊だ。
昆虫学者になる夢を持ち、大学を出て、大学院で学位を取得。
しかし安定した給料をもらいながら研究をする道は、狭き門である。
将来を棒に振るリスクを覚悟で、サバクトビバッタの研究のためにアフリカへ飛んだ。
2年という期限内に、結果を出さなくてはならない。
アフリカでは度々サバクトビバッタが大量発生し、大きな被害が出ていた。
この発生を食い止めることができれば、アフリカは救われる。
純粋にバッタの研究をしたい気持ちに使命感が加わり、意気込んでアフリカへ乗り込むも、なかなかバッタは現れない。
結果が出せなければ、将来はない。
しかしそこは、さすが研究者。あの手この手で未来を切り開いていく。
その原動力は、ひたすらに「情熱」だ。
フタを開けてみれば、誰もが持っている純粋な気持ちである。
昆虫学者などというと遠い存在のようだが、そういった距離感を全く感じさせることがない。
若い著者の軽妙な文章が面白く、芸人の自伝でも読んでいるような感覚であった。
モーリタニアの生活。
昆虫の話。
バッタとの戦い。
著者の将来。
そして、著者の人柄。
どれもとても面白かった。
気負わず読める本だ。
コミック感覚で、手にして欲しい。
ぽ子のオススメ度 ★★★★★
「バッタを倒しにアフリカへ」 前野ウルド浩太郎
光文社新書