翻訳ものはあまり読まないのだが、ふと魔が差して、しかも長編が読みたくなったのである。
しかし予想してはいたが、やはり言葉に違和感がある。
「本」はあらすじだけでなく、言葉も含めて作品なのだ。
翻訳だとあらすじは伝わるが、言葉としてはいかがなものなのだろうか。
そんな気持ちで読むから気が進まなくなるのだが、あっという間にストーリーに引きずり込まれていた。
アメリカはカンザス州のオーリン・フォールズの貧困地区に生まれたヘンリーは、このような底辺の生活から這い上がることを夢見ていた。
その思いはどんどん強くなり、目的のためなら手段を選ばない冷徹な男になっていく。
今、欲しいものは全て手に入れ、ヘンリーは満たされていたはずなのだが、1通の手紙が彼の良心を呼び覚ます。
目を背けていた過去の非道。
それはやがて彼に重くのしかかる。
この苦しみから逃れるためには、罪を贖うほかにない。
自称精神科医のソフィーは、ヘンリーの「悪行リスト」を作るのだが・・・。
面白かったが、ベタといえばベタか。
言い方を変えれば「裏切らない」ということにもなるが、そんなんで、読みやすかった。
しかしグイグイ読まされた割に、読み終わった時にあまり充足感がない。
こういうのを「娯楽モノ」とでも言うのか。
サラッと読むにはちょうど良いが、その場限りという感じであった。
ぽ子のオススメ度 ★★★☆☆
「ヘンリーの悪行リスト」 ジョン・スコット・シェパード
新潮文庫 ¥819(税別)
「爆笑必至・感涙保証」・・・はどうかとEE:AE4E6