あれからまだ一度も水をやっていないが、花たちは元気である。
さっそく乾燥地獄か、と思うかもしれないが、天気が悪かっただけである。
ぽ子はもうお花ちゃんが可愛くて可愛くて、しょっちゅう窓を開けては見つめている。
まぁいつも始まりはこうである。
まだ安心してくれとは言えない。
しかし、頭の中は花の事でいっぱいだ。
離れていればお花ちゃん、どうしているのかしら、と黄色や赤のお花たちを思い浮かべ、もっと仲間を増やしてあげたいと考える。
今はまだ、庭の一部に置いたラティスのほんの一部分にしか花はないが、もう「まだあそこにも置ける」「工夫すればあそこにも」と先のことを考えている程である。
日曜に買った鉢植えのほかに、トイレで死にかかっていた観葉も庭に出した。
1つは元気が良かったが、他のものは時間をかけて死に向かっている状態であった。
茶色い葉を触るとパリパリと乾燥した枯葉の音がしたが、まだ辛うじて緑の部分もあるのだ。
長いことアウシュビッツに閉じ込めていたが、最後にシャバに出してやる事にした。
これが驚いた事に、みるみる元気を取り戻しているのだ。
まだ死に損ないには違いないが、緑の部分がグングン成長し始めたのだ。
まるで死の底から太陽を掴み取ろうとするが如く、天に向けて緑の葉を、茎を、伸ばし始めた。
ぽ子は深く反省した。
アウシュビッツとかふざけている場合ではない。
手厚く育てていく事を誓う。
ところで、毎日仕事帰りに寄っているスーパーにも、花を売っている。
私は食材を買いにスーパーに行っていたので、目もくれたことがなかった。
それらは店頭に乱雑に出されていて、それこそアウシュビッツじゃないかと思うほどの扱いに見えたが、ここ3日見ていて気が付いた。
毎日花が微妙に入れ替わっているのである。
つまりそれは、毎日コンスタントに花は売れていて、毎日コンスタントに補充されている事を意味する。
3日前からの私の様に、しげしげと花を見て買おうか買うまいか悩んだりしている人がたくさんいるのである。
そしてそれは、「今買わなくては売れてしまうかもしれない」という事でもある。
昨日もおとといも買おうか迷ったのだが、どうせ何日も残っているだろうから急ぐこともないと思っていた。
それが、毎日がラストチャンスと知ると、黙って見過ごす事はできなくなった。
200円ほどの安い花だ。
しかしつぼみもちゃんとたくさんついていて、私はそのつぼみがひとつずつ我が家の庭で花を咲かせるところを想像した。
買いましょう。
本当は2種類買いたかったのだが、さすがに花の衝動買いに400円は高い。
それだけあれば蜂蜜が買えるのだ。
蜂蜜たけーな、ちくしょう。
私は198円の鉢植えを買い、もっと安い蜂蜜を求めて2軒目のスーパーに向かった。
大型スーパーである。
このスーパーは入り口に花屋があるのだが、普段は切り花しか置いていない。
普段は。
今日はなんと、ラベンダーフェアをやっていた。
ラベンダー。
私はラベンダーが庭に咲き乱れるのが夢である。
ガーデニングなど無理だと諦めていたから具体的に考えたことなどなかったが、今、目の前に紫の花を可憐に咲かせたラベンダーがスッと背を伸ばして並んでいるのだ。
3つで400円。
さっき高いから諦めた値段である。
でも3つで400円なのだ。
400円出せば3つも買えるのだ。
見ると残りはもう4つしかない。
そして目の前で女性がじっとそれを見ている。
私はすました顔して3つのラベンダーをカゴに入れ、ダンナの財布から400円出した。
ひどい女である。さすが東村山のヒトラーぽ子。
こんなぽ子の人生の目標は、いい人になることである。
花の写真をUPしたいのだが、土が足りなくて情けない状態になっている。
週末に綺麗な姿をお見せできたらと思う。
しかし毎日行くスーパーで、毎日新しい花が2、300円で入ると思うと、今後が恐ろしいぽ子であった。