午前9時50分。私は迷っていた。
その時私はリビングのソファに座っていた。
隣には猫が3匹、気持ち良さそうに眠っている。
暖かな日差しがリビングの窓から入り込み、部屋の中でも春の訪れを感じることができた。
眠いんだろうと思われるかもしれないが、そうではない。
眠くないから迷うのだ。
昨日はとうとう一睡もできなかった。
理由があるとすればいつもの入眠困難の延長だが、眠れなかったのだから入眠ではない、不眠である。
酒を控えるようになってからは、爽快な午前中と引きかえに不快な夜を過ごす事になったが、ここまで全く眠れないという事はほとんどなかった。
「眠れん・・・。」
「眠れん・・・。」
「まだ眠れん・・・。」
最後が「朝・・・。」なのだ。
私は朝日に気付いた瞬間、本気で病院へ行く決心をした。
このままでは一生、酒抜きではまともな睡眠が取れないのだ。
薬をくれ。
ガツンと寝れるヤツ。
朝日から目覚しまでは憧れの病院のことばかり考えていた。
「眠れないんです。」
私が先生に訴えると先生は気の毒そうに「それじゃこれ、出してあげるね。」と処方箋を書く。
それよそれ、それが欲しいんだって。
あ~、明日の今頃は~~、僕は夢のなかぁ~~~♪♪
寝てないので起きるのは辛くはない。
5時半が何だっつの、4時でも3時半でも大丈夫であった。
眠くないから眠れなかったのだ。
私は眠気など微塵も引きずらず、朝食の支度に取り掛かった。
ダンナが起きて来るのはそれから遅れる事30分。
空いた時間が暇だったので、前倒しで家事を片付けてしまう事にした。
きっと後で眠くなるだろう。
それまでにやれるだけのことをやってしまおう。
その調子で「これもやっとこう」「あれもやっとこう」と、8時半には洗濯掃除布団干しアイロンがけ風呂掃除ピアノが終わっていた。仲間はずれひとつ。
そんな調子で今度は庭の雑草抜きをしようと庭に向かう窓の前に立ったが、そのとき時計を見たら9時50分だったのだ。眠くはない。
しかし、今日の午後の仕事は非常に単調な座り仕事の予感がしていた。
家ではない、会社の仕事だ。
眠いと言って寝る訳にはいかないのだ。
眠気を我慢して仕事をするのは本当につらい。
だったら少しでも寝ておいた方がいいんじゃないだろうか、と迷ったのだ。
しかし11時には晩ご飯の下ごしらえをするのがぽ子のウィークデーなのだ。
1時間しか寝れない。
徹夜明けで1時間だけ寝て起きる時の気持ちを想像すると、あまり気が進まなかった。
第一、眠くないのだ。
いや、でも寝ようと思えばいつでも寝れそうである。
これは決断が先だ。
寝るのか寝ないのか私の瞼の判断を待っている時間がもったいない。
いい天気だ。気分がいい。
雑草取りも結構好きだ。
丸一日起きておけば、今夜こそグッスリ眠れるかもしれない。
今眠くないということは、今は眠りが必要ないということなのだ。
・・・とそこまで分かっていながら寝る方をとってしまった。
職場で寝てしまう恥だけは何としても避けたいのだ。
しかしキッチリ1時間でスッキリ起きた。
徹夜がなんじゃい、睡眠なんていらん時はいらんのだ。
もうすぐ今度は夜の9時50分になる。
全く眠くは無い。
そうだ、必要ならきっと嫌でも寝れるはずだ。
これから5時半起きの生活が始まるが、この1時間の早起きが1時間の早寝に繋がるかもしれない。
病院はまだだ。
ぽ子はヘトヘトになるまで頑張ろうと思う。