歯医者だ。
というか、もはやラーメン・デーだ。
次の回の歯医者まで、たいてい1週間か2週間あるのだが、にもかかわらず歯医者の帰りに食べるものが当日まで決まっていない。
「何を食べにいこうか」と考える事は幸せな悩みのはずなのだが、これだけ時間があっても考える事をしないのだ。
平日は時間がないと言い訳ができるが、休日が2日間、休前日の夜だってダラダラ起きて飲んでるんだから、「時間がない」は通用しないはずだ。
じゃあなんで、と言われれば、酔っ払って忘れているか、二日酔いでかったるいか、そのどちらかなのであった。
なので、歯医者当日は非常に忙しくなる。
歯医者が夕方に入るので、いつもは午後からの出勤が午前になる。
3時まで仕事をすると、歯医者に出るまでは45分しか家にいる事ができない。
この間にパソコンを立ち上げ、怒涛の検索地獄となるのだ。
歯医者は西荻で、待ち合わせるダンナの仕事場は虎ノ門である。家が久米川。
そのあたりでと限定して自分の好みを探す事は、結構難しい。
「そこそこ興味がある」とキャパを広げていくつかピックアップすると、今度は地図を携帯に送るか印刷だ。
機械は苦手じゃ。これでまた時間を食う。
そして必ずと言っていい程、この作業の途中で眠くなる。
なので5分、10分でも寝てしまう。
あぁハードだ。
それもこれも歯医者が西荻だからだが、そのお陰でその度にラーメンが食べられるのだ。
そのための努力なら厭わない。
ミニスカで出陣だ。
ダンナは仕事帰りなのでいつもスーツなのに、私はジーパンにトレーナー、暖かいだけが長所のジャケット姿である。
銀座では恥ずかしい思いをした。
今日は不景気の影響で、いつもよりも一時間早く仕事を上がった。
なので、ダンナの嫌がるミニスカを穿いてシャレ込んだのだ。
しかし、下に穿くものがない。
靴下って訳にはいかないから、ストッキングかレギンスかタイツになるが、私は葬式用の黒いストッキングしか持っていない。
そうなると娘ぶー子のものを借りる事になる。
「・・・ぶ(笑)」
彼女は私のミニスカ姿を見て笑った。
そしてレギンスを持ってきたのでそれを借りたが、いざ家を出るときに大変な事になった。
レギンスに対してブーツが短いので、中途半端に太い足が出てしまうのだ。
もう時間は予定をとっくに過ぎていた。
あああ、じゃあブーツ変えるっ、長い方!!
これもぶー子のものだが、去年から履いているところを見た事がないシロモノだ。
埃で足先の色が変わっている。
「ぐ~~~~~~ぅぅ・・・。」
初めて履いたが、なかなかかかとが入らない。
ちなみに足には、レースで指先が出る露出度の高い靴下を履いていたが(これもぶー子のものだ)、素足の部分が広いので摩擦で進めないのだ。
「ダメだッ!!タイツ持ってきてっ!!」
ぶー子のものばかりだが、指令を出しているのは私だ。親の特権である。
どんどん時間が過ぎていく。
私は玄関先でスカートを腹までめくり、レギンスを脱ぐとタイツを穿いた。ワインレッド(笑)
女性ならわかるだろうが、タイツ類は股の部分がフィットするまで上がってこないと気持ちが悪い。
かといって、こんなに華奢なものを力任せに引っ張ると破れてしまう。
こんな時の早業は、股を開いて屈伸である。
ジャンパースカートはタイトなので、腹まで上がっている。
「・・・おかん・・・、キモい・・・。」
キモいだろうが、人を待たせないのが大人の世界の常識なのだよ。
それを守るために何かを捨てなくてはならない時もあるのだ。
いい手本になったことだろう。
本日もバタバタで出掛け、何とか予約の時間には間に合った。
今のところ遅れたことはないが、同じ歯医者に通っている母は一度行くのを忘れた事があるらしい。
彼女の遺伝子を継いでいるのだ。
私もいつかやるんじゃないかと心配している。