気が付いたら1年が経っていた。
「タバコク(煙草・告別式)」と称して、会社の仲間と禁煙を誓ったのは去年の7月1日であった。
休日であったこの日、私はダンナと昼間っからカラオケ屋で飲んだくれていたが、家についてダンナが寝たのを見届けてから脱走し、タバコクに向かったのだった。
結局今日まで禁煙できたのは、私だけであった。
自分でも信じがたい結果だが、さほど苦しくもなかった。
「読むだけで止められる」という禁煙本にすっかり洗脳され、禁煙に留まらず様々なことに挑戦した。
あの日々は一体何だったのだろう?
禁煙以外に達成したものはひとつもないが。
今では禁煙しているという意識すらなくなった。
もう「止めた」のだ。
私の世界には無縁のものとなった。
正直に言えば、1回か2回、かなり激しく吸いたくなったことはある。
娘ぶー子とケンカした勢いだ。
私はぶー子と衝突すると、とにかくタバコが吸いたくなる。
説教するときもそうだ。
子供の頃のぶー子は、私の説教が始まると察知すると、タバコと灰皿を持ってきて「ハイどうぞ。」と言ったほどである。
とにかく頭に血が上って、衝動的に猛烈にタバコが吸いたくなった。
く~。
その時の心境はこの一言に尽きる。
tuguさんちの猫の名前ではない。
吸いたい、吸いたい。
でも吸えないのだ。
いや、吸える。
吸おうと思えば吸えるのだ。
禁煙なんてまたやり直せばいいじゃないか。
いやいや、ここで吸ってやり直していたら、いつまで経っても禁煙などできないはずだ。
1本だよ。
私は止められるんだから、1本吸ったって関係ない。
葛藤があった。
しかし、リセットするには大きな日々の積み重ねであった。
私は耐えた。
しかし、怒りを精神力で抑えられるほど、私は大人ではない。
冷蔵庫に突進した。
何の迷いもなくビールの缶をフン掴むと、ブシュッとプルタブを引いた。
「ちくしょう」という気持とこの「ブシュ」という音がシンクロし、妙に気持がいい。
ゴキュゴキュと一気にビールを喉に流し込むと、そこでやっと少し落ち着いた。
タバコは止めたが、こうして役目が酒にバトンタッチされた。
酒の出番はこんな時ばかりではないのだ。
多忙である。
「辛い日々だったよ・・・。まさか解放される日が来るとは思わなかった。お前も諦めずに頑張れよ。」
肺が肝臓に言っている。