確かに1日2回のエルの面会で忙しかった。
転院して時間の都合上1回になったが、もしかしてこれは今まで以上に忙しくなるかもだぞ。
1時から仕事だから、ご飯を食べてから行きたいなら12時までには帰っていなくてはならない。
早く出たいのだが、娘ぶー子より早く出ると
あいつ、ちゃんと学校へ行くんだか信用ならないのだ。
なのでぶー子が出たのを見届けて、8時半に出た。
珍しくちゃんと時刻表を見てから出ようとしたが、
寸前で行き先の違う時刻表を見ていた事に気がついた。
危ない危ない。日常茶飯事だが。
バスを降りるときに思ったが、これから毎日行き帰りに
小銭を出すのは煩わしい。
帰りにバスカードを買おう。
そうだ、ついでに電車のカードもだな。
電車のカード?パスネット??
待てよ、これJRじゃん。
私はJRなど殆ど使わないので勝手がわからない。
券売機を見て回ったが、カードで買えるようになっているのはわかるのだが
カードの入手方法がわからない。
仕方ない、窓口で聞いた。
「あの~・・・。キップを買えるカードとかっていうものはあるのでしょうか??」
「???は??」
「パスネットみたいな・・・。」
「ああ、SUICAですね。」
SUICA。そうか、SUICAってそうかそうか。
駅員さんもこんなに当たり前のことを聞かれると思わなかったのだろう。
スイカじゃん、わかったよ、そうじゃん、クソ、恥ずかしいな。
しかしカッコいいね、このスイカは。
パスネットと違って、自動改札ではスッとかざすだけでいいのだ。
パスネットは自動改札に通すと、定期やキップよりワンテンポ出てくるのが遅い。
絶対に歩幅に合わないのだ。
手は出口でしかるべき形で待っているのに、カードが遅い。
一瞬なぜか「ヤバイ!!」と思ってしまうのだった。
私はバチーンと扉が閉まるのをかなり恐れている。
しかも、私は早足で歩くので、閉まるときは大抵ぶつかりながらもすり抜けてしまい
何だかこのトシで確信犯みたいで、よけいにこっぱずかしいのであった。
前回、乗り換えたら逆に乗ってしまったので、
今回もまた何かヘマをするんじゃないかと心配だ。
一駅ごとに駅名を確認し、次の駅も確認する。
本を持って行ったのだが、そのたびに思いっきり中断され
なかなかスムーズに読めないのであった。
ジャンヌ・ダルクの出てくる小説で、ただでさえ小難しい文章が多く訳が分からないのに
どこ読んでいたのか探すのに一苦労だ。
無事に西川口に着いた。今度はバスだ。
前回はタクシーで行ったのだが、帰りは病院の受付でバス停を聞いてバスで帰った。
バス停を覚えておいたので、今度はそこ目指して行けばいい。
乗り場はすぐにあった。
行き先の下に路線地図がある。
確か「なんとか学校」だ。
お~、あったあった、「K小学校南」。
ちょうどバスが止まっているが、これ、そこに行くのか?
どうしよう、どうしよう、運転手さんに聞こうと乗った瞬間動き出したらイヤだし。
結局乗り損ねる覚悟で、側にあった市役所のナントカいうところで聞いた。
「そこだったら、たくさんバス出てますよ。じゃあこの広い道路の信号を右に曲がって・・・。」
例によってそこまでしか覚えられなかった。
さっきのバスでも行けたようだが、やはり逃してしまった。
さて、バス停、バス停・・・。
つーか、何で駅前のバス停がそんなに遠いんだ?
案の定バス停は見つからず、その辺で停まっていたバスの運転手に聞く。
「そこでしたら、その信号を左に曲がったところですよ。」
信号、左。これならたどり着けそうだ。
ところが確かに信号左なのだろうが、信号を渡ってから左なのか、渡る前に左なのか、
これ間違えたら逆に行っちゃうじゃないか。プンスカプンスカ。
あ、そうか、行き先をちゃんと見りゃいいんじゃん。プンスカしてごめん。
しかし結局渡らなくていい信号を渡ってしまって、どえらい遠回りをしてしまった。
時間がどんどん過ぎて行く。
「K小学校南」で降りた。
かなり悲しい気持ちになった。
全然違う場所だったのだ。
迂闊だった。
アバウトな覚え方をするからこういう事になるのだ。
ここはどこなのだ?
これからまた駅に戻って、降りるべき停留所を探し、乗るべきバスを探し、乗るべき停留所に行く時間などない。
ばかぽ子。
通りがかったタクシーを拾う。
転院して2度目の面会だ。
エルはどうなっただろう?
昨日は手を伸ばして来たから、今日は側に来て「出して~~!!」と前のように鳴くかもしれないぞ。
・・・寝ていた・・・。
グッスリ寝ていた。
ケースをコンコンとたたくと気だるそうに薄目を開けたがそれだけだ。
眠くて眠くてたまらん、という感じですぐに目を閉じてしまう。
10分ほど私はそこに立ち尽くしていた。
エルさ~~ん。
ぽ子が来ましたけど~。
諦めて帰る事にした。
思えば入院してから、こんなにまともに寝ている所を見るのは初めてだ。
「寝てること、あるんですか?」とまじめに聞いたぐらいだ。
多分、息苦しくてよく眠れなかったのだろう。
ウトウトするまではするんだけど、すぐに目を覚まし動き回るのだ。
やっとゆっくり眠れるようになったのかもしれない。
帰りのバスも行き先の違う時刻表を見ていて、危うく乗ってしまうところだった。
電車では、降りる駅のひとつ前を出たところで寝てしまい、
目があいた瞬間、ドアが開いてビビッた。
それからはもう眠くて眠くて仕方がなかった。
これが10代の頃であったら仕事など休んで寝ただろう。
エルがやっとゆっくり眠れるようになったので
ぽ子も眠くなるのだよ。
しかし家に着いたらもう12時であった。
そして現在、もうすぐ夜の12時である。
もう眠くて眠くて眠くてタマランのでした。