舞台はレバノン。ベイルートのスラムで暮らす難民の物語だ。いや、ドキュメンタリーかと言いたくなるような、リアルな作品であった。
監督:ナディーン・ラバキー
キャスト:ゼイン・アル・ラフィーア、ヨルダノス・シフェラウ
たくさんの兄弟と暮らす少年ゼイン。貧乏で着るにも食べるにも事欠く生活だ。両親にも余裕はなく、罵倒される毎日。妹のサハルが心の拠り所だったが、11歳でアパートの家主と結婚させられてしまった。
生活のためにサハルを差し出した親を恨み、家を飛び出したゼイン。行くあてもなかったが、ひとりで子供を育てているラヒルに出会い、子守をする代わりに一緒に暮らせることとなった。
ところがある時ラヒルは、不法就労で捕らえられ、帰らなくなる。
何も知らず残されたゼインと赤ちゃんのヨナス。生きるためのゼインの過酷な日々が始まる・・・。
重い話だ。
恐らく現実としてある難民の状況なのだろう。
問題提起であり、娯楽的要素のない作品だ。面白いと言って観られるものではない。
故に淡々としていて、起伏に乏しい。これでもかと続くゼインの不幸。観続けるには結構忍耐が必要だ。
そもそも舞台についての情報が少ないので、何がどうなっているのかを理解するのにも時間がかかった。
そんな中で、「母性」についてだけははっきりと響くものがあった。
同じ厳しい状況の中で、ひたすらに子供を守ろうとするラヒルはゼインの母親と対照的で、そのような愛情に触れられたのはゼインの数少ない幸運だったのではないかと思う。
そしてゼインは、ラヒルの赤ちゃんを最後まで守ろうとするのである。
重い話であった。
「映画観よっか!」のノリで観るものではない。
ぽ子のオススメ度 ★★☆☆☆
ダンナのオススメ度 ★★★☆☆