ドキッとして思わず足が止まる。
似ている人、というのは意外といるものだ。
華奢で背中の曲がった老人。
柄の入った地味な薄手のシャツと、無地のズボン。
母もこんな感じだったが、「老人」という認識はなかった。
母は母であった。
「お義母さん、ずいぶん歳取ったねぇ。」とダンナに言われたことがあったが、ピンとこなかったのだ。
当時80代の後半ぐらいだったと思うが、急に歳を取った訳ではないのだ。徐々に老けていくその過程をずっと見ていたからか、そういう風には見えなかったのである。
実家から商店街が遠いので、時々車で買い物に連れて行ったりはしたが、あんな頻度では足りなかったのではないか。
総菜売り場で太巻きやカツオのタタキを買っていたことを覚えている。もう調理もしんどかったのかもしれない。
時々おかずを多めに作って分けたりしてはいたが、そんな頻度では足りなかったのではないか。
実家の階段は、小さくて急だった。
母がそれを上る時は、両手を上げてついて這うようにして「登って」いたのだ。
母は、確実に歳を取っていた。あれは普通の「お婆さん」だった。
町で、お店で、時々見かける「お婆さん」。
つい、手を貸したくなる。
誰かの代わりになればいい。
母は誰かに助けられたことはあっただろうか。