また私は走っていた。今度は背中にシンセを背負っている。
予定のバスに乗り損ねてしまったのだ。
しかしこのバスはぐるぐる循環しているコミュニティバスなのだ。一度離れてまた近くまで来る(笑)別のバス停にもう1回チャンスがあるのだ。それに向けて走った。
ダンナの予想だと「止まらずに走り続ければ間に合うんじゃないか」というところで、私は止まらずに走り続けた。
図らずも週末に2回もジョギングの羽目である。
バスは何とか間に合った。息が切れて、マスクが苦しい。
駅に着いたら、リハの開始まであと20分。バスの本数が少ないから、こんなことになっているのである。次のでは間に合わないのだ。
コンビニで時間を潰す。
小腹が減った。
食べたいものは色々あるのに、ダイエット上、制限があってなかなか決めることができない。
いちいち製品の裏を見て、炭水化物だの糖質量だのを確認。
ため息をつきつつ、サラダチキンをチョイス。
結局バッグに入れたまま、食べる暇がなかったのだ。翌日家でそれを見つけ、それはまだ冷蔵庫に入っている。
スタジオでのリハは、それこそ一年ぶりぐらいになるんじゃないだろうか。
セッティングとか、久しぶりだよ、でっかいアップじゃ。
グランドピアノの上にシンセを乗せ、楽譜を置く場所がないことに気づく。
シンセの向こう側にシンセケースを支えにして立ててみたが、これではピアノに座った時に見えない。
一応コピーも一部ずつ持って来てあったが、もうそれを置く場所もない。
そもそも色々と準備不足だったのだ。ここで諦めの終了ゴングが鳴った。
ピアノパートは捨て。
ライブがある訳じゃないからほどほどでOK、みたいな雰囲気だったはずが、みんなちゃんとやってきてるじゃないか。
テスト前に「全然勉強してないから」という周りの声を信じて、ひとりでバカを見たケースと同様だ。恥ずかしい。
かと言って、「ちゃんと仕上げて来い」と言われたところでせいぜいこの辺が私の限界だろう。テストも同様だ。
周りがどうあろうと、結局こうなるのである。
子供の頃から変わってないな・・・、演奏に遭難しつつ、思いを馳せる。
それでもこうして全員で音を合わせると色んな発見があり、もっと良くなる道が具体的に見えて来るものだ。
一人で練習していると、全体像が見えない。
自分の役割が確認できたのだ。今度はこれを持ち帰って、新たな形にするのが理想である。
しかし、ライブの予定がないという緩みが致命的だ。
果たして私はやるだろうか。