本来は、水曜日がその日であった。
しかしどうにも気が重く、毎週つい先延ばしして翌日の木曜日になっていた。
嫌、というのとはちょっと違うんだが・・・。
母が亡くなり、80歳の父は一人暮らしとなっている。
元気ではあるが、何が起こってもおかしくはない年頃だ。兄と相談して、週に一度電話することにしたのである。兄と私で、週に2回の生存確認だ。
少ないとは思うが、これでも毎週、何を話したらいいものか、頭を悩ませるのだ。こちらの気持ちとしては、いっぱいいっぱいのところだったりする。
そもそも十数年、疎遠にしていた父だ。今さら毎週何を話すというのか。
しかし結局毎度、心配には及ばない結果になる。
健康の話さえしてれば、延々と向こうが喋ってくれるのであった。こちらは相槌さえ打っていればいい。
やれ足が痛い、食欲がない、医者が気に入らない、検査は嫌だ。
前に話したことは忘れてしまうのか、何度でも、言う。毎週、言う。必ず、言う。
そして、ボケへの不安。
物覚えが悪くなった。すぐ忘れる。囲碁が弱くなった。
体も弱くなったし、オレももうダメだ・・・・・。
これ・・・、
母ソックリEE:AEB64
母は父より10年上だったが、ちょうど80ぐらいの時の母は、こんな感じであった。
同じ道を辿ると思うと、暗澹たる思いだ。またあれを繰り返すのか。
何とか元気になって欲しいものである。
木曜日。
意を決してまた電話をかける。
「おお、ぽ子かEE:AEACD」
顔は見えなくても、ほころんでいるのが分かる。まるで子供の頃の私に呼びかけるような声だ。
私にとっては単なる生存確認だが、もしかしたらこの電話はもっと重要な役目を果たしているのかもしれない。
父のひとりの暮らしに、思いを馳せる。