「好き」と「大丈夫」は必ずしもセットではない。
例えばカキは好きだけど、アレルギーがあって食べられない。
動物は可愛いと思うけど、実物は怖い。
そんなもののひとつである。
好きなんだけど、大丈夫ではない。
何度も後悔して、もう止めようとそこから足を洗ってきた。
それでも結局は「好き」なのだ、ついつい小さいところからまた、踏み込んでしまう。
やがてそれはだんだん大きくなり、いつかまた後悔するのである。
気がついたらズッポリはまっていた。
私はそのサイトをお気に入りに登録し、ちょっとした暇ができると読むようになったのだ。
それは怖い話を集めたサイトである。不思議な話や不気味な話なども含め、小さな話から大きな話まで随時更新されるので、常に内容が充実しているのだ。
昼間の明るいうちなら大丈夫、と最初は「不思議な話」あたりから読むようになった。
へ~、本当に不思議だ。
田舎に伝わる風習。
死んだおじさんが、亡くなる時間に訪ねてきていた。
絶対に近づいてはいけないと言われていた家。
徐々にそれは怪談めいたものになっていく。
自分に関わりのない話だったら大丈夫だろう。
場所が限定されている。そのような環境になり得ない。
やがてそういった感じに選別し、読めそうな怖い話を読むようになった。
そんな感じでとうとう3つある「殿堂入り」の話のうち、2つを読んでしまった。
怖くはなかった。
ひとつは昔話仕立てであり、まるで映画でも観るように楽しく読んだ。
もうひとつはいかにも嘘くさく、途中で読むのを止めてしまった。
殿堂入り、あとひとつだなぁ。これならいけるんじゃないか??
タイトルは名前だ。花子さん、とか村田さん、とかいう感じの。
いかにも都市伝説っぽいタイトルである。
読んじゃえEE:AE5BE
読みながら、これはフィクションだ、と思った。
細かい設定が甘い。
大げさな怪談にありがちな突拍子もない展開。
なんだ、余裕じゃん、と思っていたら、「この話を知ってしまった人は、・・・」という展開である。ギャー、それヤメテEE:AEB30
さっきまでフィクションだ、うそっぺー、全然怖くない、と思っていたのに、途端に私は恐怖のどん底に突き落とされた。
来るよ、手足ない人が来ちゃうよ、どうしようEE:AEACB
すぐにスマホを切り、気分転換に取り掛かった。
フザケンナヨー、汚い手使いやがってEE:AE5B1
私は心底後悔した。
そしてその後悔は、寝る前に頂点を迎えるのである。
「・・・という訳で寝るのが怖いのですが、どうしましょう。」
夜になり、恐怖心はより一層上がっていた。ダンナに説明するのも怖く、言葉を選んで遠回りをせざるを得なかった。
ところでダンナはこういった話を全く信じない人なので、冷静であった。
「まずね、そういう話はウソだから。だから怖がったところで何も起こらないの。それを不必要に怖がるから、ちょっとした物音や気配に敏感になる。それが『霊現象』になっちゃったりする。ただのドアを開ける音だったりするんだよ?怖がるから変な方にいっちゃうんだよ。」
分からなくはない。というか、その通りだろう。
しかし理屈ではないのだ。その人が来たら、チョー怖い。もうその人が来なくてもチョー怖いんだってEE:AEB64
「来ない!」「でももし来たら、」と不毛なやり取りのあと、「何かで上書きしたら?もう朝までゲームやってればいいじゃん。」と建設的なことを言った。
「でもでも、私一人でここでゲームやって、もうすぐ2時になるよEE:AE5B1夜中の2時にひとりで、みんな寝てて、2時に、そんなの・・・。」
ダンナは「ダメだこりゃ」というような顔をして、次に「猫の動画でも見たら?」と提案した。
ちなみに男女の会話の違いは、女性が共感を求めてただ気持ちをダラダラ垂れ流すのに対し、男性は具体的な案を出そうとする傾向があるらしい。その典型である(笑)
しかし無駄ではなかった。私はさしあたっての解決策を出すことができたのである。
薬だ。
不眠対策に安定剤を飲んでいるが、ここに抗不安剤を追加する。
精神を安定させる薬と、不安に抗う薬を飲むのだ。最強ではないか。効けばだが。
果たしてそれは、功を奏した気がする。
一体どこまでが薬の力なのかは分からない。
考えないようにしたこともあるだろうが、大して怖い思いもしないで普通に寝ていた。
あの「平気っぷり」は何だったんだろう??
実はもうあまり怖くなくなってしまったので、検証はまたいつか怖い日に持ち越しだ。
正直、単体ではあまり効いている気がしない薬だが、一緒になるとすごい力を発揮するのかもしれん。
それでももう、怖い話は御免だ。今度こそ、足を洗う。