人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

HELP!

大まかな旅の予定は、新千歳空港で朝ご飯、札幌で定食の昼ご飯、動物園に行って、夜は予約した居酒屋、なんならハシゴ、シメにラーメン、翌朝は市場に行って朝ご飯、昼前の飛行機で帰京、であった。

しかし空港の目ぼしい店はまだ閉まっており、先にチェックインして昼の定食を食べに行ってしまおう、ということになった。

こんな変更など、まだ序の口だ。

滞りなく定食を食べ、動物園に行く。

ショッピングと動物園は、予想以上に歩かされるものである。どえらい疲れたEE:AE5B1

時間はまだたっぷり余っていたが、「もう寝よう、ホテル帰って寝よう」、異議なし、である。

爆睡。

予約した居酒屋は、いわゆる地元密着型の手軽な店であった。エビカニの豪華なお夕食ではございません。

しかし、てんこ盛りの舟盛りが自慢の話題店なのである。情緒もワビサビもあったもんじゃない、てんこ盛りだ(笑)そういうのが好きなのだ。面白いじゃないか。

とはいえ、生魚などそんなに大量に食べられるものではない。

注文したのはこの舟盛りひとつ、もう違う店で何か違うものを、という気持ちになり、店を出る。

この店はビルの5階にあり、私達はエレベーターで上ってきたのだった。

その時エレベーターの壁に、ビルに入っているお店の紹介が貼ってあったのだ。

その中に・・・、ビートルズ、という文字が・・・(笑)

“マスターとビートルズ談義で盛り上がりませんか?”。

来る時に予感はしないでもなかったが、行ってみようということに。すでに日本酒で結構酔っていたのである・・・。

LET IT BAR。

ライブハウスのような佇まいで中の様子が分からず、正直、非常に入りにくい。

しかし、せっかく札幌まで来たのだ。冒険してみようじゃないか。エイッEE:AE4E5

こぢんまりとした店内にはマスターと思しき男性が一人、テーブルでうなだれていた。

ね、寝てたか??

気付くと向こうもちょっと驚いたようで、「いらっしゃいませ」というより、「どうしたんですか??」みたいなリアクションであった。

東京から来ました、上の居酒屋で飲んで、ビートルズ、というような説明をすると頬が緩んで、席を勧めてくれた。

壁にはギター、ピアノも置いてあったのでテンションが上がる。

店内は雑然としておりメニューもないので、「ワインとかありますかねぇ」と聞くと、「ワイン、ワイン・・・、これでいいか」とその辺にあった開けかけのものを持ってきた(笑)いや、私達はそれで全然構わないのである。むしろその様子が楽しく、気取らない感じがすっかり気に入ってしまったのだ。

その後も恐らくマスターのものと思われる日本酒を一緒に飲むが、もう「1杯いくら」ではない、ちょいちょい注いでくれ、友達の家で飲んでる感覚だ(笑)すっかりこっちも緩んでしまい、弾いてしまうのである。

調律の狂ったピアノは、ジャズピアノのような響きでこれもまた気に入った。

マスターはボーカルの人だそうで、思いつくがままにビートルズを弾くと、カウンターにいてもテーブルに座っていても、歌ってくれる。

楽し~EE:AEB64

その後、ふたり男性客が来たが、ふたりとも初めて顔を合わせたというのに、私達も含めてすっかり馴染んでいる。

マスターは彼らにも自分の日本酒を注ぎ、つまみを適当に持ってくる。

経営としては崩壊しかかっているが、お客さんから聞いたところによると、昼は昼で仕事をしているらしい。

どこぞで美味しい惣菜を作っているとのことで、「本当はちゃんとしたもの、作れるんだよ、マスターは。」と言っていた。

マスター自身、このお店は趣味でやってるだけ、との事だ。一見さんは滅多に来ないと言って、歓迎してくれたので嬉しい。

あとから来た男性二人は会社社長とのこと、マスターのネットワークが謎だ。不思議な人である。

御歳60いくつと言っていたが、一中バンドの兄さんたちと同じぐらいじゃないか。彼らを連れて来たくなった。

バーHELPを出ると、今度はフラフラとカラオケに。無性に歌いたくなったのである。

ギリギリの理性が「ご利用時間1時間」でとどめたが、酔っ払って歌いたい曲が入れられず、ふたり合わせて1曲しか歌わないで店を出た。その曲が何かも、思い出せない。

シメはラーメンだ。

しかしこんな状態では右も左も分からない。酔っていたので手当たり次第に聞いて回る。聞かれもしないのに「東京からやってきました!道が分かりません!」と言い、絵に描いたような酔っ払いである。

それにしても、札幌の人は、総じて親切であった。

美味しいラーメン屋さんを教えてくれたり、ひとりで歩いていた女性は「ん、あっち!」と大きな身振りで指差し、ニコリと笑顔。

タクシーの運転手さんも、とても親切であった。

ラーメンも美味しかったし、素晴らしい夜だったのだ。

「・・・・・・もう間に合わない。」

朝になって、ゲンナリとしてダンナは言った。

寝坊した。市場はもう無理だ。

「何だよ、これ・・・。」レジ袋にボトルワインとピーチネクターが入っていた。

上着のポケットに手を入れると、なぜか免許証。何でだ、何でだ・・・、あっ。

カラオケボックスで、誕生月特典のデザートをもらったのだ。免許は誕生日の証明だろう。ちゃっかりしてやがる。

ホテルの朝食バイキングで朝ご飯を済ませたが、二日酔いでほとんど喉を通らなかった。

わざわざ書くが、この時の朝食はヨーグルトとお粥とコーンフレークと無理やり流し込んだカレーのソース、あとは大量のジュースと水である。

しかし悔いはない。

失ったもの以上のものを、もらうことができたと思っている。

また行きたいなぁ。

ありがとう、札幌。