いくつになっても別れは辛いものだ。
その日が近づいていたのは分かっていた。
会いたいような、会いたくないような、会っておいた方がいいような、複雑な気持ちであった。
しかし別れが迫った今、「会っておいた方がいい」という事に気付いたのである。
私はそこへ向かった。
出会った場所である。
私達の付き合いは、まだ浅い。
私は日頃、「先入観を持つ」という事をしないように心がけてはいたつもりだったが(なぜなら逆に、こんな自分では先入観を自分に対して持たれた場合には、友達ができないからである、これは自分に対する他人への希望でもあるのだ)、気付かぬうちに彼には酷いレッテルを貼っていた。
あまりいい出会いではなかった。
正直に言うと、私は彼を見下していた。
いや、それどころか軽蔑していたと言ってもいい。
あまりにも当然のように蔑んでいたので、そんなレッテルを貼っていた事にすら気付かなかったのである。
そんな事を悔いたが、悔いた時にはもう別れは迫っていたのである。
アインベッカー。
賞味期限、8月11日。
とうとう58円にまで値段が落ちていた。
ネットで買えば、一本200~300円するのである。
私は米を諦めて、4本買って帰ってきた。
我が家の在庫は6本となった。
もうすぐお別れだ。
300円のアインベッカーなんて、友達じゃない。