酔ってベルトがなくなるなんて、一体どんな状況なのだ?
私も散々なくしたり壊したりしてきたが、こればかりは謎が多く、色んなケースを考えたのである。
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そもそも俺は、なぜあんなところを歩いていたのか?
思えばあの時点でもう上着もなくしていたが、とにかく俺は歩いていた。
したたか飲んで思考力は完全に止まっており、本能だけで家に向かっていたのだろう。
恐らく日付は変わっていたはずだ。人ひとり姿が見えない、薄暗い川沿いの道。
あれだけ酔っていてそいつの気配を感じたのは、俺にピッタリくっついていたからである。
背後だ。姿は見えない。右腕に冷たい刃物の感触。
「金だ。財布ごとよこせ。」
そいつの低い声が、頭の中をこだまする。
金・・・、財布・・・?
ああ、俺は今、物盗りにあっているのか。
腕に感じる刃物の正体は良く分からないが、結構大きい事は感じられる。
女房や子供達の顔が浮かんだ。それに比べれば、財布なんて軽いものである。
そもそもこれだけ酔っているのだ、中身なんていくらも入っちゃいないだろう。
しかし、どうしても譲れないものがあった。
ガリガリくんの当たり棒が入っているのだ。
金なんて、真面目に働いていればちゃんと入ってくるものである。
しかし、当たり棒は運である。次はいつかは分からない。
死守せねば。
敵はナイフ。酔った俺には・・・、
これがある。
そしてベルトのバックルに手をかけた・・・。
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おい・・・。こいつは酔っているのか?
のんびりベルトなんか外しているから取り上げて音を鳴らしただけなのに、それだけでぶっ倒れちまった。
どんだけ小さな心臓なんだ・・・。
良く見ると、いつも行く床屋の兄ちゃんじゃないか。
腕もいいし、いいヤツだから通っていたのだが、悪いことしちまったか。
財布だって、見たらカラッポじゃねえか。
しょうがねぇ、送ってやる。
店なら毎月行っているのだ、良く知っている。
俺のポンコツで乗りつけると、店は散らかったまま、鍵も開けっ放しであった。
「一中バンド」のチラシが貼ってある。日付は今日だ。
慌てて出て行って、スッパラカンになるまで飲んできたのか。
バカなやつだな・・・。
俺は担いできた彼を床に下ろす。
無茶しやがって・・・。
心なしか、顔色が少し青ざめているように見える。
その頬に触れて暖めたいと思う自分に気がついて驚いたが、認めない訳にはいかない。
俺は・・・、俺は・・・。
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良く来るお客さんで良かったですねEE:AEAC5
新しい扉はもう開かれたかな??EE:AEB80