眠いじゃねーかEE:AEB64
久しぶりに酒を抜いて寝たが、どっちにしても寝不足である。
それでも翌日のダルさがないだけマシだが、眠くてたまらない。
酒がないとなかなか寝付けないので、睡眠薬代わりに本を読んでから寝る。
もちろん「本」には雑誌やマンガも含まれ、昨日選ばれた栄えある1冊は世界遺産の雑誌であった。
寝室に入ると子猫が待ち構えていて、弾丸の如く飛び出してくる。
一人ぼっちで閉じ込められていたのだ、その喜びようは凄まじく、ピョンピョン飛び跳ねながら足元を行き来する。
ああ・・・EE:AEB67
今夜も寝不足確定である。
モン・サン・ミシェルの特集を組んだA4版の薄いその雑誌を持って、私はベッドに横になった。
チビもすぐに飛び乗ってくる。
それから絶え間なく、手に足に噛み付いて蹴りを入れ続けるのだ。
痛みはさほどないが、読んでいる手を持っていかれるのだ、読みづらいことこの上ない。
両手を雑誌から離さないでいると飛びつかれて雑誌が揺れて読めない、片手を持っていかせれば残ったひとつの手で雑誌を支えなくてはならない。
しかもチビの攻撃は絶え間なく、あっちこっちに目標を変えるのだ。
その度に文字は上下左右に揺れ、雑誌は手から落ちそうになる。
しかし腹は立たない。
二人目の余裕である。
子猫なんて、こんなモンなのだ。
ハイハイ、寂しかったね、遊んでるといいよ。
ところが子猫の成長も攻撃も、とどまる事はない。
昨日は頭上から雑誌に向かって突然ダイブしてきた。
これには驚いた。
美しいモン・サン・ミシェルの島は、グシャッと二つに折れた。
ああ、こりゃちょっとやりすぎッスよ、子猫ちゃん。
彼は「ダイブ」のスキルを身につけたようで、それからは手足攻撃の合い間に頭の上から降ってくるようにもなった。
腹は立たない。
子猫なんてこんなモンなのだ。
むしろ今のうちに暴れておいて、私が寝る頃には疲れて一緒に寝てしまえばいい。
それにしても、攻撃のバリエーションが一つ増えるだけで、非常に本が読みにくくなるものである。
まぁこんな時期も今だけだ。
私も楽しんでおこ・・・、
「痛い!!」
何度目かのそのダイブで子猫の爪が私の耳に刺さり、鋭い痛みが走った。
この夜だけでもずいぶん引っかかれ、蹴られてきたが、この痛みは非ではない。
突然私はキレた。
猫同士が威嚇するようにガオーと吠え、頭をペシッと叩いてしまった。
すると子猫はピタッと大人しくなり、動きを止めてこっちを見つめている。
しばらく膠着状態だったが、やがて子猫は静かに枕元に歩き出し、そこで丸くなった。
しまったやりすぎたか、効果絶大過ぎだ、これじゃ。
しかしもう一度こちらからちょっかいを出せば、また私はチビのおもちゃにならなくてはいけなくなるだろう。
私はもう眠かったので、そのまま本を閉じた。
最近少しずつ先住猫と子猫を対面させているが、先住たちは子猫のナメた攻撃には容赦ない。
大人しくしている分には遠目で見ているが、調子に乗ってパンチなんて食らわせようものなら、その倍のパンチを返している。
こうして子猫は上下関係を覚えていくのだろう。
私もこのようにして、おもちゃの地位を捨てなくてはならないのかもしれない。
それにしたって、結局時間が経てば振り出しに戻るのだ。
今日も寝不足である。