少年Aとは、1997年に起きた、あまりにも有名な神戸での殺人事件の犯人である。
酒鬼薔薇聖斗と聞けば、誰もが簡単に思い出すことができるだろう。
史上最悪と言われる、少年犯罪である。
酒鬼薔薇聖斗=少年Aについての本は数多く出されているが、私もこれまでいくつか読んできた。
それは事件の概要であったり、Aの生い立ちであったり、はたまたAの両親の手記であったりしたが、この本は2500日に及ぶ彼の更生プロジェクトの全容である。
なので、事件についての詳しいことや、事件当時のことには重きを置いていない。
話は彼が関東医療少年院に到着するところから始まる。
過去に例を見ない事件であり、更生プロジェクトも手探りの状態から始まった。
「更生する可能性も、全くないわけではない」というところからのスタートである。
Aの起こしたこの事件は「性犯罪」に分類されるようである。
プロジェクトは彼の「性的サディズム」の矯正と、歪んだ親子関係の建て直しにかかっていた。
しかし更生の兆しを見せるまで、実に1年半もの時間を要した。
Aはそれから少しずつ変わっていくのである。
私はそれまで「こんな極悪小僧、殺してしまえ」ぐらいに思っていたし、出所など、遺族の気持ちを思うともっての他だと思っていた。
しかし、多くの医者や教官に支えられ、彼は変わった。
更生にゴールはないが、出所の時点で「自信を持って送り出せる」とまでスタッフに言わせたのだ。
人生の最終目的「アングリの儀式=殺人」をやり遂げて廃人になっていたAが、時間をかけて変わってくさまが興味深い。
スタッフの努力と忍耐にも感嘆である。
ぽ子のオススメ度 ★★★★☆