何となく鼻がひんやりする。
不快な感覚だ。それはやがて、雫となる。
鼻水だ。放っておけば、スルッと一滴、垂れてくる。
風邪とも花粉症とも違うアプローチだ。後腐れなく、一滴。しかし不快な一滴である。
歳のせいなのか、この一滴が頻繁になってきて、非常に不快だ。
前兆はあるので垂れる前に拭くようにしているが、一滴である。これでティッシュ一枚消費するのは不経済だ。もったいないので次の一滴にも使おうと、ティッシュはポケットに入れてしまう。
その後数滴それを使うこともあるし、忘れて新しく使ってまたポケットに突っ込んでしまうこともある。
なのでどの服のどのポケットも、丸めティッシュでいっぱいだ。
バッグの底にも、テーブルの上にも、丸めティッシュはどこにでもいる。
ゴミ箱は、すぐに溢れるほどの丸めティッシュに埋め尽くされてしまう。
一滴の鼻水が起こす、驚愕のムーブメントである。なすすべもない。
思えば実家に行けば、母の丸めティッシの詰まった箱がいくつもあったものだ。
これは何かと聞くと、「ちょっと鼻水拭いただけだから、汚れたところ拭くのに使おうかと思って」などど言い、まだ若かった私はオゲェとなったものだ。
私のこのしみったれた鼻タレは、もう治ることはないのだろうか。
このままだと私も、母と同じ道を辿るような気がしないでもないのだ・・・。