「土曜日は何の予定も入ってないから、ちゃんと計画して有意義に過ごそう。」
金曜の夜、私達は話し合っていた。
ネットでイベントを調べる。
いや、動物園もいいね。
いやいやもういっそ、食べることに絞ってみるか。
難航した。
何を決めるにもそうだが、決め手がないのでどれも捨てがたく、またどれも決定打に足りず、ただあれこれいいねと言っているだけで時間が過ぎていた。
「そういえば、カラオケ行ってないね。」
「ホントだ、カラオケ行ってないね。」
「カラオケにしようか。」
「カラオケにしよう。」
カラオケの登場で、呆気なく決まってしまった。
カラオケ。
何の情緒もない休日である。言い代えてみれば、昼飲み。
私らの決定打など、こんなものである。
それでも金曜の夜と来ればキッチリ飲むので、翌日カラオケボックスに着いてからの最初の1杯が重い。
フリータイムをフルに使うために、開店時間である11時には到着していた。
まずはドリンクバーでアイスコーヒーとスープを2種類、メニューを見て最初の1時間は過ぎてしまった。
しかし、ひとたびアルコールが回ればあとは突き進むのみ。
気がついたらもう6時だ。酔っ払いの時の流れは速い。
そして時間の観念は、なくなる。
「ラーメン食べよう。」もはや、セットだ。カラオケボックスを出るとラーメン。
「どうせなら久米川に行くか。」
ひと駅先に行けば、ラーメンの選択肢は増える。
酔っ払いのフットワークは軽い。
そこにあるのは「今」だけなのである。「遠い」「面倒」「寒い」など、感知できはしない。
ある意味無敵だ。この調子で小金井の二郎へ行ったのはいつのことだったか。
あくまで本能に忠実である。
ちょっといい中華屋さんに入り、予定よりハイレベルなラーメンを食べる。
これでも勢いは留まることはなく、気になっていたけど勇気がなくて入れなかったお店に突入。入ってみたら飲み屋と言うよりもバーであった。これまたハイレベルなやつ。
そして最後っ屁にココイチのカレーを食べてやっと家に向かうバスに乗り、帰る途中でスーパーに寄って肉を買った。
その肉を食べて、一日が終わったのである。
これが私達の「有意義な一日」であった。